[P-059] リンパ腫維持療法中に発症したCOVID-19罹患後の間質性肺疾患に対して,少量ステロイド療法が著効した一例
【背景】COVID-19罹患後のPost-COVID-19-Interstitial-Lung-Disease:PC-ILDと称される病態の存在が示されており,それに対するステロイド治療の有効性が報告されている.しかし抗CD20抗体等の免疫抑制薬使用下でのPC-ILDの発症症例,及びそれに対する有効な治療コンセンサスが示された報告は乏しい.【症例】61歳男性.【主訴】労作時の息切れ,倦怠感.【病歴】当院血液内科にて悪性リンパ腫に対する維持療法が継続されていた.当科初診日の約2ヶ月前にCOVID-19と診断され,ウイルス抗体療法により症状の軽快を認めた.しかしその後症状が再増悪し,発症から約1ヶ月後に他院で再入院となった.退院後の血液内科受診時,CT検査で間質性肺炎所見を認め当科へ紹介受診となった.【所見】血液検査:WBC10800/μl,好中球63.9%,リンパ球22.6%,好酸球3%,CRP2.63mg/dL,LDH226U/L CT検査:両肺胸膜下を中心にびまん性すりガラス影を認める.【経過】臨床経過及びその他の検査所見からPC-ILDと考えられた.初診時に軽度の自覚症状は存在したが低酸素血症は認めず,また血液検査の炎症所見も軽度であったため,自然治癒を期待し定期的なフォローアップにて経過観察を行う方針とした.しかしその後も軽度ながら炎症所見は遷延し,間質性肺炎に関しては一部増悪傾向を認めたため,少量の経口ステロイド投与を開始した.治療開始後,速やかに炎症所見の正常化と間質性肺炎所見の消失を確認し,自覚症状も軽快を示した.その後はステロイドの漸減を行いつつ経過観察を継続している.【考察】本症例は悪性リンパ腫に対して抗CD20モノクローナル抗体による維持治療中であったという背景がある.同薬剤治療下でのCOVID-19の罹患は入院期間の長期化,死亡リスクの増加との関連が示されている.本症例の経過から,このような特殊な免疫抑制状態で生じたPC-ILDに対しても,通常のPC-ILDと同様に少量ステロイド療法が有益である可能性が示唆された.【結語】悪性リンパ腫に対する維持治療中にPC-ILDを発症し,少量ステロイド療法が著効した症例を経験した.