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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-048] 鑑別に難渋したクリプトコッカス髄膜炎の一例


【背景】免疫不全患者の発熱の原因は多岐にわたり,しばしば珍しい原因微生物も想定する必要がある.
【症例】
膜性腎症に対してプレドニゾロン15mg/日,タクロリムス3mg/日で内服中の74歳男性.
【主訴】
発熱
【病歴】
来院数ヶ月前から繰り返す感染症と精神症状があり,ステロイドを減量していた.来院1週間前から37度前半の発熱が出現し,体動困難と食欲不振が出現したので当院内科初診外来を受診した.随伴症状として頭痛があった.経過中にST合剤の怠薬はなかった.
【所見】
来院時38.6度の発熱があり,意識清明であった.身体所見では口腔内に齲歯を認めるほかに所見が乏しく,項部硬直もなかった.血液検査では白血球12000,CRP 3.84mg/dlであった.血液培養は陰性.
【経過】
明らかな感染源がなく,ステロイド減量中であり,当初は副腎不全として治療を開始した.一時的に全身状態は改善したが,入院第20病日に意識障害が出現した.腰椎穿刺で髄液圧の上昇と細胞数増多がみられ,翌日にクリプトコッカスが検出された.同日からアムホテリシンBとフルシトシンで治療を開始し,髄腔内圧を下げるため連日腰椎穿刺を行った.意識状態は徐々に改善し,最終的には文章単位での会話が可能になった.第100病日に療養病院へ転院となった.
【考察】
診断に難渋したクリプトコッカス髄膜炎の症例を経験した.当初相対的副腎不全としてステロイド増量することで一時的な全身状態の改善が見られたことで,その他の鑑別診断を十分に検討することができなかった.振り返れば,亜急性の頭痛や精神症状があり,クリプトコッカス髄膜炎をより早い段階で想起することは可能だった.
【結語】
免疫不全患者の髄膜炎では経過が亜急性であり,かつ症状が乏しいことがあり,積極的な髄液検査が望ましい.

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