[P-032] 大腿骨頸部骨折を契機に発見されたビタミンD欠乏の1例
【症例】生来健康な43歳女性。生育歴や家族歴に特記事項なく月経は整、偏食や飲酒、喫煙歴なし、サプリメントの服薬歴もない。脊椎や全身骨・関節に変形なく、身長147.9 cm、体重47.5 kg、坂道を歩行中に転倒し左大腿骨頸部骨折を受傷、手術加療を行った。右大腿骨頸部での骨塩定量検査でYAM 69%、Tスコア -2.5と骨粗鬆症を認め、総合内科紹介となった。血清iP 3.2 mg/dL、補正Ca 9.7 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 104 mEq/L、intact PTH 30 pg/mL、PTHrP 1.1 pmol/ Lと異常なく、25(OH)ビタミンD は14.5 ng/mLと低下を認めた。腎機能は良好でFECa 0.18 %、蓄尿Ca 30 mg/日と尿中Ca排泄抑制あり、%T RP(尿細管リン再吸収率)は88.04%(基準値 80%以上)、TmP/GFR(尿細管リン再吸収閾値)は3.2 mg/dL(基準値 2.3~4.3 mg/dL)と正常範囲であった。FGF23は68.1 pg/mL(基準値 30 ng/mL以下)と軽度高値だがALP(IFCC) 62 IU/ L、骨型ALP 13.1 IU/ Lと基準値であった。アルファカルシドールの内服を開始し血清iP 4.2 mg/dLまで上昇を認め経過観察中である。【考察】近年の我が国の報告においても一般人口の81.3%がビタミンD不足とされ日常診療で身近な疾患である。ビタミンD欠乏では骨量低下や骨石灰化障害に加え易転倒性、認知機能低下、心血管障害等の様々な症候を呈する。低リン血症を伴う骨疾患では、FGF23が30 ng/mL以上の場合にFGF23関連くる病/骨軟化症を考えるが、FGF23は様々な全身因子により影響を受けて数値が変動し解釈には注意を要する。本例においても種々の要因により二次的なFGF23の上昇が疑われたが尿中リン排出の亢進やビタミンD活性化障害はなく、FGF23高値に起因した低リン血症の可能性は乏しいと考えられた。当科で経験したビタミンD欠乏症3例について併せて報告する。