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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-034] 認知症発症前からMRIで経時的画像変化を追跡しえたV180I変異を伴うクロイツフェルト・ヤコブ病の1例


【背景】クロイツフェルト・ヤコブ病を発症以前から末期にかけて画像変化を追跡できた報告例は少ない。【症例】74歳女性【主訴】行動異常、認知機能低下【病歴】71歳で肺腺癌と診断された。同時に微小な左小脳転移病変も指摘され、以降定期的に頭部MRIでフォローされていた。73歳時に頭部MRIで左頭頂葉に皮質に沿うDWI高信号がみられた。その3か月後、6か月後のMRIで病変は拡大し、同時期より物の場所が分からない、迷子になるなど進行性の認知症症状が出現し、当院神経内科外来を受診した。【所見】長谷川式13点、MMSE13点と認知機能低下、手指失認や感覚性失語などを認めた。髄液検査での14-3-3蛋白陽性、総tau蛋白の著明な上昇と、プリオン蛋白遺伝子解析から、codon180のV→I変異を有する家族性クロイツフェルト・ヤコブ病(fCJD with V180I)と診断した。【経過】数か月で歩行困難、半年ほどで寝たきり・経口摂取困難となると考えられた。本人となるべく自宅で過ごしたいという家族の意向から、訪問介護やレスパイト入院を併用しつつ外来通院を継続した。診断から半年ほどで大脳皮質のほぼ全域に病変が拡大し、歩行困難、疎通困難となった。今後はさらに身体・精神機能の低下とそれに伴う感染症などの問題が生じると思われ、本人・家族へのサポートを継続していく。【考察】fCJDでは様々な変異型が知られているが、日本ではV180I変異が最も多い。孤発型CJDと比較して発症年齢が高いことや進行が比較的緩徐であることが知られている。本症例では認知機能の低下が顕在化する約半年前から左頭頂葉に皮質に沿う高信号病変がみられ、経時的に左大脳半球皮質、両側鳥距溝周囲皮質、対側頭頂葉皮質への病変の拡大がみられた。大脳皮質に限局する高信号病変では、CJDも鑑別に挙げ経時的にMRIでの変化を確認する必要がある。【結語】発症以前から病変が指摘され、経時的に画像変化を追跡し得たfCJDの症例を経験した。経時的に大脳皮質に限局して広がる病変ではCJDを疑い、早期診断に努める必要がある。

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