[P-036] SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の再活性化を繰り返した悪性リンパ腫の1例
背景:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫治療中の患者が、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)を発症。治療経過にて2度の再活性化を認めた症例を報告する。症例:72歳男性主訴:咳嗽、発熱病歴:X月Y-2日咳嗽と37.1℃の発熱を認めた。X月Y-1日COVID-19簡易抗原検査キットで陰性。X月Y日前医にて再度抗原定量検査を行い陽性化を確認した。重症化リスク(神奈川モデル19点)を加味し入院治療が適切と判断され、当院に緊急入院となった。
来院時所見:聴診上両下肺有意に水泡音あり、COVID-19抗原検査にて>5000 pg/ml、胸部CT検査にて両肺にびまん性すりガラス状陰影あり(1スライス最大40%)
経過:酸素飽和度(SpO2)94%(2L/min)と低酸素血症を認め、COVID-19中等症Ⅱの診断で抗ウイルス薬のレムデシビルを5日間、デキサメタゾン(6.6mg/日)を10日間の治療予定で開始、6病日には酸素需要の改善を認め、酸素オフとなった。しかし、同治療後の13病日より38℃台の発熱症状が出現、15病日にはSpO2が88%(室内気)に低下し、再度酸素投与を開始した。17病日にはSpO2が89 %(4L/min)と呼吸状態が増悪、COVID-19抗原検査を再施行したところ1060 pg/mlと再活性化を認めた。胸部CT検査で両側のすりガラス陰影の増悪の所見を呈していた事から重症化症例と判断し、高度医療機関へ転院搬送した。同医療機関では、高流量鼻カニュラ酸素療法(ネーザルハイフロー)、抗生剤治療に加えてレムデシビル+デキサメタゾン治療を再度施行、25病日にはSpO2の改善を認めた。しかし、35病日に再度呼吸状態の悪化を認め、40病日のCOVID-19抗原検査で>5000 pg/mlと再再活性化を認めた。その後、呼吸不全が進行し、42病日に死亡した。なお、本症例はCOVID-19ワクチン接種を4回施行済みであった。
考察、結語:COVID-19の標準治療後の呼吸不全遷延の原因は、主にウイルス陰性化後でも広範囲に障害された線維化を伴った残存肺病変によるものと考えられている。本例のようにCOVID-19の活性化を繰り返して呼吸不全が進行する症例は極めて稀であり、免疫不全患者における治療方針を考慮する上で極めて貴重な症例と考えられ、若干の文献的考察を含めて報告する。