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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-039] 両膝の関節液とも白血球数が10万を越え、血液培養でCNS陽性にも関わらず乾癬性関節炎であった1例


【背景】5年前左上顎癌で手術・放射線治療・化学療法後
【症例】70代女性
【主訴】両膝関節痛、体動困難
【病歴】入院7日前、両膝関節に違和感が出現した。入院6日前、他院整形外科を受診し、X線検査、MRIの結果、変形性膝関節症と診断され、膝関節腔内にヒアルロン酸注射施行された。その後改善なく、両膝関節痛が増悪し体動困難となり当院へ救急搬送され入院となった。
【所見】体温38.6度、血圧130/70mmHg、脈拍96回/分、SpO2 95%(室内気)、両膝関節に腫脹・熱感・圧痛あり。膝関節穿刺で黄色混濁の関節液が採取され、関節液中の白血球数は、118000/μL、血液検査でCRP 33.13mg/dL、WBC11270個/μL。
【経過】入院後、関節液・血液培養を提出し、セファゾリン(CEZ)を開始した。入院3日目、血液培養1セットずつより、それぞれ感受性の異なる別菌株コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が検出された。コンタミネーションの可能性を考慮し、血液培養を再検しCEZ投与を継続した。 入院7日目、両膝関節痛は軽減し、CRPは8.26mg/dLと改善した。入院8日目、関節液培養・追加の血液培養の陰性を確認し、化膿性関節炎は否定的と判断し、CEZ投与は終了した。抗菌薬中止後、両膝関節痛の増悪はないが、新たに右手関節痛が出現した。病歴を再度聴取したところ、尋常性乾癬の既往が明らかになり、乾癬性関節炎と診断した。
【考察】本症例は、関節注射後に発症した急性関節炎であり、10万/μLを超える関節液中の白血球増多を認め、化膿性関節炎の鑑別を第一に考えたが、最終的に乾癬性関節炎と診断した。急性関節炎の診断は、1つの所見だけではなく総合的な所見をもとに考慮することが大切であった。尋常性乾癬を伴う患者では、血液培養がコンタミネーションとなるリスクもあり、その解釈にあたっては注意が必要であると考えられた。
【結語】尋常性乾癬を伴う患者の関節痛では、乾癬性関節炎を想起しつつ感染の除外を確実に行うべきである。

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