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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-041] 繰り返す蜂窩織炎で、皮膚科、整形外科、膠原病内科を受診したが、未診断であった感染性心内膜炎の一例


【背景】感染性心内膜炎(IE)の診断の遅れが依然として課題である。皮膚軟部組織の炎症はIEの一症状であるが、十分周知されていない。
【症例】58歳男性
【主訴】37.5度の発熱、手指尖部の疼痛と変色
【病歴】高血圧と高尿酸血症で治療中、心疾患の既往は無い。4か月前に左手第2指の疼痛と発熱があり、近医で蜂窩織炎の診断で抗菌薬を投与され改善した。その2週間後に右足の腫脹を認め、抗菌薬で軽快した。3か月前に右足の疼痛と左第2指尖の疼痛・発赤と発熱があり、当院救急を受診した。皮膚科でMRIを施行、右足背蜂窩織炎と診断された。蜂窩織炎を繰り返していたことから、膠原病内科と整形外科に紹介された。膠原病の所見が無く、骨髄炎や筋骨格の異常を認めないことから、すべての診療科は終診となった。3日前からの37.5度の発熱と左手第4指尖部が赤紫色で疼痛を伴ったため、当院総合内科を受診した。
【所見】独歩、意識清明、血圧116/76mmHg、脈拍90/分、体温37.3℃。左手指尖は赤紫色。心尖部にLevineⅣ/Ⅵの汎収縮期雑音を聴取。血液検査でWBC 13400 /µL、CRP 7.83 ㎎/dL。血液培養2セット4本でStreptococcus mitis陽性。経胸壁心エコーで僧房弁前尖に20mm径の疣贅と僧帽弁閉鎖不全を認めた。
【経過】IEの診断で入院し、セフトリアキソンが投与された。入院3日目に僧帽弁置換術、抗菌薬治療を受け治癒退院した。
【考察】IE診断の遅れに関連する要因に、CRP <10mg/dL、不適切な抗菌薬投与、救急車以外での来院、自己弁が挙げられており、本症例もこれらを有していた。整形外科での診療も診断の遅れと関連しており、筋骨格系異常の患者にIEが存在することをうかがわせる。
【結語】移動する複数回の皮膚軟部組織の炎症ではIEが鑑別に挙がる。関連する診療科でIEの周知と内科コンサルテーションを促進する必要がある。

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