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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-045] 典型的な皮疹がみられないまま電撃性紫斑病を合併し急激な転帰をたどった日本紅斑熱の1例


【症例】77歳女性【主訴】発熱、意識障害、全身の疼痛【病歴】リウマチ性多発筋痛症に対してプレドニゾロンを長期内服中の方。X-5日から発熱、体動困難、尿失禁などがあり、同日前医に救急搬送された。尿路感染として加療されたが、改善しないためX日に当院へ転院した。【所見】身体所見:意識レベル JCS I-2、体温 36.6 ℃、血圧 86/52 mmHg、脈拍 67/分、呼吸数 20/分、SpO2 95 %(O2 1L/分)。下肢に多発する皮下出血あり、体幹四肢に皮疹なし。両肩・肘・手・股関節に圧痛あり、発赤熱感なし。血液検査:WBC 7,520/μL、RBC 405万/μL、Hb 12.5 g/dL、PLT 7.7万/μL、PT 13.6秒、APTT 44.2秒、FDP 114.6 μg/mL、AST 259 U/L、ALT 97 U/L、LDH 558 U/L、フェリチン 4,745 ng/mL、CRP 33.0 mg/dL、sIL-2R 7,064 U/mL。頸部~骨盤部造影CT:両膝関節腫脹がみられる以外特記すべき所見なし【経過】血管内リンパ腫や重症熱性血小板減少症候群などによる高サイトカイン血症を疑い、骨髄検査やランダム皮膚生検を予定した。またリケッチアPCR目的に保健所に血液検体を提出した。X日深夜より呼吸・循環動態が急激に悪化したためICUへ入室し集学的治療を開始した。両下肢に著明な紫斑が出現しており、電撃性紫斑病と考えた。X+1日に紅斑熱リケッチアPCR陽性と判明し、日本紅斑熱としての加療を開始したが同日深夜に死亡した【考察】日本紅斑熱はRickettsia japonicaを保有するダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症である。発熱、皮疹、刺し口が主要三徴候であり、皮疹は94-100 %の症例でみられる。発症から5日以上の治療の遅れが重症化リスクであるとの報告があり、典型的な皮疹がなく診断困難な症例であったとはいえ、治療の遅れが急激な転帰をたどった一因と考えられる。日本紅斑熱による電撃性紫斑病の報告も10例程度あるのみであり、その点でも本症例は稀な症例といえる【結語】急激な転帰をたどった日本紅斑熱の1例を経験した。熱源が明らかでない場合、流行地域や行動歴などからダニ暴露の可能性を検討し、典型的皮疹が見られなくても日本紅斑熱の可能性があれば治療を躊躇わないことが重要である。

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