[P-042] 糖尿病性の足趾潰瘍との鑑別を要した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症による下肢虚血と足趾潰瘍の1例
【背景】好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は,難治性の気管支喘息や副鼻腔炎が先行し,末梢血中の好酸球増多を背景に全身の血管炎をおこす疾患である.今回進行する足趾潰瘍について糖尿病由来かEGPA由来かの鑑別を要した症例を経験したため報告する.【症例】50代男性【主訴】左足趾の疼痛,間欠性跛行【既往歴】下肢深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症【現病歴】X-3年頃に初発の気管支喘息発作および季節性の鼻炎が生じた.X-2年より全身に掻痒を伴う皮疹が生じ,末梢血中の好酸球増多を指摘された.X年2月より左母趾・示趾の疼痛,色調不良が見られ,左下腿の疼痛のために間欠性跛行が生じ,改善乏しいため6月に紹介となった.【身体所見】四肢に紫色の小丘疹が散在,足背動脈・後脛骨動脈は両側で触知不良,左足部の冷感と色調不良あり.左母趾・示趾は暗紫色に変色あり.【検査結果】WBC 8000 /μL, 好酸球 1600/μL, Hb 14.4 g/dL, Plt 28.3×104 /μL, BG 277 mg/dL, HbA1c 7.9%, CRP 0.35 mg/dL, ESR 24 mm/hr, ANCA陰性. 下肢CTA:左優位に下腿の3分枝の遠位で描出不良.【経過】大腿部の皮疹の生検で好酸球性の血管炎所見あり.気道症状,好酸球増多と合わせ,EGPAの診断となった.足趾潰瘍について,未指摘未治療の糖尿病があり,まずは糖尿病など動脈硬化性疾患による血流障害を考慮し,血糖管理や血管拡張薬・外用で対応したが,足趾潰瘍は悪化し,間欠性跛行も増悪した.血管内治療も奏功せず,その他に全身性の炎症所見に乏しいものの,EGPAによる下肢の血管炎と虚血と考えて,ステロイド内服を行ったところ,下肢の疼痛と足趾潰瘍は改善していった.【考察】EGPAは他のANCA関連血管炎よりも径の太い動脈の炎症をおこしうる.本症例の糖尿病は少なくとも2年以内の経過であり,動脈閉塞をおこすには罹病期間が短かったこと,血管内治療による拡張が難しいことより,EGPAによる血管閉塞と考えられた.【結語】末梢動脈の閉塞による下肢虚血と足趾潰瘍を生じたEGPAの1例を経験した.EGPAは動脈分枝レベルで血管炎による閉塞をきたしうる.