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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-047] 感染性心内膜炎を鑑別に挙げていたにも関わらず血液培養提出が遅れた不明熱の1例


【緒言】診断エラーにおけるBig 3として感染症が挙げられ、感染性心内膜炎(IE)はその代表的疾患として知られる。一方、総合診療医は不明熱診療時には日頃からIEを鑑別疾患に想起する。IEを鑑別に挙げていたにも関わらず血液培養提出が遅れてしまった不明熱の症例を認知バイアスの視点で振り返る。
【症例】33歳女性
【主訴】発熱、咳嗽
【病歴】Williams症候群に伴う僧帽弁閉鎖不全症(MR)があり定期観察されていた。X-4月に発熱、咳嗽があり近医から抗菌薬を処方され一旦解熱したものの、その後症状再燃し持続するためX-2月に前医総合内科を紹介受診した。各種検査では熱源を特定できずPET-CT検査を行い脾臓に限局したFDG集積を認めたためリンパ腫を疑われた。しかし診断には至らず、前医血液内科を経由してX月に当院当科を受診した。
【経過】汎収縮期雑音、心不全徴候を認めたが既知のMRの影響と判断した。血液検査で炎症反応を認めたが、前医での長い精査歴より、細菌感染症は積極的に疑わなかった。sIL-2R 2086 U/mL、LDH 364 U/Lと高値、造影CT検査では心拡大と脾腫のみを認めたという結果から、脾原発悪性リンパ腫を第一に疑い一度は脾摘の方針とした。しかし、念のために感染症除外目的に採取した血液培養から腸球菌が検出され、さらに術前心臓超音波検査で僧帽弁に疣贅を認めたことから、IEの診断に至り脾摘を回避できた。後日、前医では一度も血液培養を提出されていなかった事が判明した。
【考察】血液培養採取が遅延した原因として、第一に複数の病院受診歴と長い精査歴から血液培養の陰性は確認済みだと思い込んだというフレーミングに加え、前医の情報を検証しきれていなかったという開梱の失敗があった。また、MRの既往があったため、心雑音、心不全増悪をMRによるものという早期閉鎖・アンカリングバイアスが起きていた。最後に発症当初の抗菌薬反応歴を排除していたという確証バイアスが考えられた。
【結論】不明熱診療では認知バイアスの存在を常に考慮することが診断エラーの回避と早期診断のために必要である。

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