[P-051] 院内発症の偽痛風に関する後ろ向き単施設観察研究
【背景・目的】
偽痛風は高齢者の病棟管理の合併症の1つでありリハビリにも影響をしている可能性がある。しかし、先行研究は乏しく、診断遅延や初期治療が不十分であるというHoらの報告がある程度であり、実態調査がとぼしい状況である。類似疾患の痛風に関しては急性期の診断や管理の不十分さと在院日数延長への関連が指摘されている。以上の背景より院内発症の偽痛風の初期治療の実態、また、リハビリテーションに対する影響を調査するため後ろ向き観察研究を行うこととした。
【方法】
2012年4月1日から2022年3月31日に練馬光が丘病院に入院した患者で、膝の関節液検査からピロリン酸カルシウムの結晶が証明された症例を抽出した。入院72時間以内の発症、化膿性関節炎併発、発熱ないし疼痛症状の記載がない人は除外対象とした。
【結果】42人43回の偽痛風が基準に該当した。男性8人、女性34人、年齢は87.5(82-93)歳だった。コルヒチン,NSAIDs,全身性ないし局所性ステロイドのいずれかによる治療が行われるまでの期間は1(1-4)日,24時間以内に治療が行われた症例は16例(37.2%),また上記のどの薬剤による治療がなかった症例が7例(16.3%)あった。リハビリテーションが行われていた42例中39例中,33例(84.6%)で偽痛風による影響が記録され,その期間は4.5(2.25-7.75)日であった。
【考察】院内発症の膝の偽痛風症例では24時間以内の治療開始は4割弱にすぎず,2割弱は適切な治療をうけていない。また,リハビリテーションが行われている症例の8割以上で数日間影響があった。本研究の限界として,未診断例は拾えないこと,選択バイアスや情報バイアスを排除することはできず,外部妥当性がことがあげられる。
【結語】院内発症の偽痛風はリハビリテーションに影響し、診断プロセスにおいて課題があることがわかった。