[P-052] Capnocytophaga ochracea (C.ochracea)・Fusobacterium nucleatumによる多発膿瘍の一例
【背景】C.ochraceaは,口腔内に常在する嫌気性グラム陰性桿菌であるが,免疫能が低下した場合に,重篤な感染症の原因となり,脳や肺,軟部組織に膿瘍を形成する.
【症例】 68歳,男性.【主訴】左側胸部痛.【病歴】来院4ヶ月前より左側胸部痛・腫脹を自覚した.来院5日前に前医を受診し,来院3日前に当院形成外科を紹介され受診した.診察上,左側胸部に熱感・腫脹を伴う腫瘤を認めた.体幹部造影CTと腹部単純MRIを行い,左側胸部・心外膜に多発腫瘤を認めたため,精査目的に入院した.【既往歴】高血圧症,2型糖尿病 【身体所見】155cm,39kg. JCS1.体温35.9℃,血圧82/59mmHg,脈拍数103回/分,呼吸数18回/分,SPO2:97%(室内気).心音・呼吸音に異常なし.左側胸部に手掌大の軟部腫瘤を認め,同部位に圧痛を認める.【検査所見】採血:WBC20100μ/L,CRP16.71mg/dL,赤沈61mm/hr,フェリチン1022.2ng/mL,血糖127mg/dL,HbA1c9.7%. 胸部〜腹部造影CT:左側胸部,左心膜に接した不均一に造影される軟部腫瘤を認め,左側胸部腫瘤は一部肋骨に浸潤している. 腹部単純MRI:左側胸部にT1強調像で低信号,T2強調像・ADCで強い高信号の隔壁を伴う15cm大の嚢胞性腫瘤認める.切開排膿検体培養でCapnocytophaga ochracea,Fusobacterium nucleatum)を検出した.【経過】入院後,アンピシリン・スルバクタムを投与し,膿瘍部を切開排膿した.500ml程度の排膿を認めた.症状・炎症反応も改善し,第25病日のCT検査で, 膿瘍縮小を確認した.【考察】C.ochraceaは口腔内常在菌であるが,本症例のように多発膿瘍の報告は珍しい.本患者では,糖尿病や口腔衛生が不良であることが要因と考えられた.【結語】Capnocytophaga ochracea・Fusobacterium nucleatumによる多発膿瘍の一例を経験した.(865文字)