[P-053] 結核性髄膜炎の診断遅延及び予後に関する検討
【背景・目的】結核性髄膜炎の死亡率は抗結核薬の治療により低下したが、依然として55-75%と高い。また、予後不良因子の1つに3日以上の治療開始の遅延が挙げられている。結核性髄膜炎の治療開始の遅延に関連した予後や因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】2011年1月1日から2020年12月31日までの10年間に、当院で結核性髄膜炎の診断となった11例を対象とし、当院初回受診から2日以内に治療開始した群(早期:E群)と3日以降に治療開始した群(遅延:L群)で分け、患者背景や発症からの期間、予後などを診療録より収集し、後方視的に解析した。
【結果】E群は2例(18%)であった。死亡例は3例でいずれもL群(33.3%)(p=0.34)であり、後遺症(高次機能障害)も含めるとE群1例(50%)、L群5例(55.6%)(p=0.89)であった。発症から治療開始までの期間はE群で56.5日(22-91)、L群で36.4日(14-91)であった。初回受診から治療開始までの期間はE群で1.5日(1-2)、L群で20.6日(6-46)であった。胸部CT所見が認められたのはE群で2例(100%)、L群で1例(9.1%)(p=0.01)であった。発熱、頭痛、意識障害、結核既往に有意差は認められなかった。
【考察】死亡や後遺症に関してはL群で多い傾向にあったが有意差はつかなかった。今後更なる症例の集積が必要と考える。また、発症から治療開始までの期間はE群で長かったが、予後は比較的良好であった。病院受診時からの早期治療介入が有効であった可能性がある。また、E群では全例胸部CTで所見があり、結核性髄膜炎を想起しやすかったものと考えられる。
【結語】結核性髄膜炎は発症から時間が経過していても受診時に早期診断、早期治療を開始することで予後を改善できる可能性がある。結核既往や肺画像検査に所見を認めなくとも、結核性髄膜炎を常に鑑別としてあげ、疑った場合には早期治療介入を検討する。