[P-055] 急性腎盂腎炎の治療経過で急激な転帰をたどった高齢女性の一例
症例は80代女性、高血圧症・2型糖尿病にて近医で加療中であった。発熱、倦怠感、体動困難にて他院に救急搬送、単純CT・採血・採尿から急性腎盂腎炎と診断され、満床のため当院に夜間転院搬送となった。転院後抗生物質治療を開始、転院2日目より解熱した。12誘導心電図は右脚ブロック所見、血液検査にてトロポニンTおよびNT-proBNPの上昇あり、心エコー上LVEF低下を認めたため、CS2の心不全合併と判断し、輸液とフロセミドを開始した。転院3日目、乏尿傾向に関して循環器内科コンサルト、心エコー上の壁運動は非常に悪いわけではないとされ、補液負荷を指示された。午前のバイタルは問題なく、朝食50%昼食80%摂取したが、14時過ぎベッド上で心肺停止の状態で発見され、蘇生奏功せず死亡した。前医の初期診断に加え「高齢女性」「膿尿」「発熱」「腰背部痛」というキーワードによって、早期閉鎖に陥った症例を経験した。剖検診断結果をもとに、今回の診断プロセスにおけるピットフォールの背景について、若干の文献的考察を交えて報告する。