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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-056] 早期発見により失明を防ぐことができた左内因性眼内炎の一例


【背景】細菌性眼内炎の中でも,眼外傷や内眼手術に起因せずほかの感染巣を由来とする菌血症から発症するものは内因性眼内炎とされており,その視機能予後は不良とされている.【症例】80歳代女性【主訴】発熱,腰痛【病歴】38℃台の発熱,左腰部痛を主訴に当院の救急外来を受診された.血液検査で炎症反応の上昇を認めたが血液検査,尿検査,胸腹部単純CT検査で熱源は不明であった.全身状態が良好であったため,血液培養を採取した上で帰宅となり翌日に総合診療科にコンサルトとなった.【所見】前日の血液培養からStreptococcus dysgalactiaeが検出された.経胸壁心エコー検査で感染性心内膜炎を示唆する所見は認めず,歯科診察で齲歯は認められなかった.腰椎MRI検査で左脊柱起立筋に少量の液体貯留を認め,同部位は拡散強調像で高信号を呈していた.脊柱起立筋膿瘍,菌血症の診断で同日より入院の上,抗菌薬治療開始となった.【経過】入院当日よりSBT/ABPCによる抗菌薬治療を開始したところ,入院2日目に飛蚊症が出現した.毛様充血,結膜充血・浮腫,眼脂,眼瞼腫脹は認められなかったが菌血症治療中に新規に出現した飛蚊症であったことから内因性眼内炎の可能性を考慮し眼科へコンサルトした.眼科診察で矯正視力は右1.2,左0.2で,眼圧は右14 mmHg,左11 mmHg であった.左眼の前房内に炎症細胞,硝子体の混濁あったことから左内因性眼内炎の診断となった.手術目的にて他院へ転院され,同日左眼硝子体手術が施行された.術中の硝子体液培養は陰性であった.術後経過良好にて手術7日後に当院へ再転院となり,抗菌薬治療を継続し経過良好にて転院28日後に自宅退院となった.退院時の左眼の矯正視力は1.0であった.【考察】細菌性眼内炎は自覚症状では初期に飛蚊症を訴え,硝子体混濁の増強にしたがい視力低下を訴えるとされている.本症例では早期発見できたために失明を防ぐことができたと考えられた.【結語】菌血症など内因性眼内炎のリスクの高い患者が飛蚊症などの眼症状が出現した際には内因性眼内炎の可能性を念頭に診療に当たる必要性がある.

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