[P-058] 市中病院における壊死性軟部組織感染症の予後規定因子に関する検証
【背景・目的】壊死性軟部組織感染症は死亡率が高い重大な疾患であるが、疾患の重症度および患者の予後を評価する予後予測ツールの報告は少なく、市中病院における報告はない。本研究では、市中病院における壊死性軟部組織感染症の予後に対するqSOFA・SOFA・LRINEC score・Charlson Comorbidity Index (以下CCI)の関連を検証することを目的とする。【方法】2016年5月から2022年9月の間に、当院で壊死性軟部組織感染症と診断された患者に対して後ろ向きコホート研究を行い、院内死亡率とqSOFA・SOFA・LRINECスコア・CCIのそれぞれの関連を評価した。【結果】登録患者は14名であり、年齢は中央値74歳(四分位範囲58-87歳)、女性7名(50%)、院内死亡は6名(42%)であった。また、 qSOFA・SOFA・LRINECスコア・CCI の平均値〔SD〕はそれぞれ1.6〔1.0〕、8.0〔5.3〕、6.9〔3.5〕、2.6〔1.3〕であった。単変量解析では、qSOFAは院内死亡に対して関連があり、年齢、性別を調整したロジスティック回帰モデルでもqSOFAは院内死亡と有意に関連していた(p=0.041)。SOFA・LRINEC スコア・CCIについては院内死亡と関連は示さなかった。【考察】本研究において、qSOFAは壊死性軟部組織感染症の予後と関連していた。Tangらの大学病院における報告や浅井らの大学病院における報告と比べて、本研究の対象は高齢でCCI、死亡率が高いが、このような集団においても、qSOFAは院内死亡と関連していた。qSOFAは敗血症スクリーニングツールとして簡便に用いることができ、高齢患者およびマルチモビディティへの対応が必要な市中病院における壊死性軟部組織感染症患者の診療においても有用である可能性がある。
【結語】市中病院においても、qSOFAは壊死性軟部組織感染症の院内死亡と関連していた。