[P-060] pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)の1例
【背景】pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)は肺動脈の腫瘍塞栓などによって肺高血圧を呈し予後不良な疾患である。【症例】74歳男性【主訴】呼吸困難【病歴】生来健康でADLは自立。来院3ヵ月前から労作時呼吸困難が出現し体重減少が始まった。来院1ヵ月前から呼吸困難で歩行ができなくなり近医で精査を受けていた。上部内視鏡検査で生検を施行したが悪性腫瘍を認めなかった。低酸素血症を認めたため当院紹介となった。【既往歴】卵円孔開存、奇異性脳塞栓症、慢性硬膜下血腫、未破裂脳底動脈瘤、腹部大動脈瘤、慢性閉塞性肺疾患【所見】血圧127/77mmHg、脈拍88回/分(整)、体温36.6℃、SpO2:92%(経鼻酸素2L/分)、呼吸回数:20回/分、臥位や坐位でのSpO2の変化なし、心音整、心雑音なし、呼吸音:清、下腿浮腫なし、心臓超音波検査:左室壁運動低下なし、三尖弁逆流圧較差:58mmHg、卵円孔開存によるシャント血流なし、造影CT:あきらかな肺血栓塞栓症は認めなかった【経過】入院4日目、急激に呼吸状態が悪化し集中治療室へ入室。入院5日目、CEA:347ng/ml、CA-19-9:117U/mlと高値を認めた。入院6日目に意識が混濁し、造影CTの読影から多発肝転移、リンパ節転移、骨転移の疑いで経過からはPTTMが鑑別上位となった。右鎖骨上窩リンパ節に対してエコーガイド下リンパ節生検を行ったが、入院7日目に亡くなられた。亡くなられた後に、リンパ節生検の病理結果からadenocarcinomaが検出された。病理解剖結果から胃癌が原発のPTTMと診断された。【考察】PTTMは急激な経過を辿るため診断が難しく病理解剖で報告されている事例が多い。しかし近年は早期に診断され治療することで救命された報告もある。腫瘍マーカーは比較的早期に確認できるため、PTTMを疑った場合は、腫瘍に携わる専門医とともに迅速に診断治療を進めていくことが望まれる。【結語】肺血栓塞栓症を伴わない急激な肺高血圧を認めた場合、PTTMを鑑別に挙げ、病理診断から治療までを迅速に進めていくことが望ましい。