HOME

2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-061] Streptococcus gallolyticus菌血症を契機に発見した回盲部腫瘍を伴う感染性心内膜炎の1例 


【背景】Streptococcus gallolyticus種は、大腸前がん細胞の常在菌であり、S. gallolyticusの心内膜炎または菌血症の患者には、大腸癌の評価が推奨されている。

【症例】高血圧、2型糖尿病の既往がある99歳のADL自立した女性が、来院2週間前からの38度の弛緩熱を主訴に来院した。症状は発熱と倦怠感のみで、全身状態も良好であった。身体所見上は心雑音を含め特に目立った所見はなく、胸部X線検査、尿検査、一般血液検査で炎症反応の上昇を認めるのみであったため、血液培養採取の上で外来フォローとした。翌日、血液培養2セットからグラム陽性球菌が検出されたため、精査加療目的に入院となった。
【所見】体温38.4℃、血圧105/98 mmHg、脈拍数98回/分 整、呼吸数12回/分、SpO2:97%。Peripheral signなし、心雑音なし、腹部圧痛なし。白血球数は7380/μl,CRP 3.36 mg/dlと炎症反応を認めた。経胸壁心エコーで僧帽弁に5mmの疣贅を認めた。腹部造影CT検査で回盲部壁肥厚、回結腸領域に複数の小リンパ節を認めた。
【経過】上記より、感染性心内膜炎としてバンコマイシン静注投与を開始した。入院後、血液培養結果がα-streptococcusと報告を受け、感受性に従いビクシリンに抗菌薬変更した。CT検査で回盲部癌の疑いがあったため、S. gallolyticusを念頭に菌種同定を依頼し、Streptococcus gallolyticus ssp pastcurianusと判明した。血液培養陰性から4週間の静脈点滴治療を行い、合併症なく元の施設に退院となった。回盲部腫瘍の治療に関しては本人、家族共に希望がなく、下部内視鏡は行わなかった。
【考察】本症例では、病理検査での癌の確定診断には至っていないが、CT所見と培養結果から回盲部癌である可能性が高く、菌の侵入門戸であると考えた。血液培養結果は当初α-Streptococcus spp.のみの報告であったが、S. gallolyticusを念頭に同定を依頼できた。本症例を通じて、菌種を積極的に同定することで、大腸癌の早期発見につながると考えられた。
【結語】S. gallolyticus菌血症を契機に発見した回盲部腫瘍を伴う感染性心内膜炎の1例を経験した。溶連菌による感染性心内膜炎をみた際は、積極的に菌株同定を行い、関連する合併症の精査を行うことが重要である。 



戻る