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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-062] CT所見より早期に診断し保存的加療に成功した胃蜂窩織炎の一例 


【背景】胃蜂窩織炎は胃粘膜培養や病理検査などを含め総合的に診断するが,稀な疾患であることも合わさり診断に苦慮することも多い.しかし,致死率が40%程度と非常に高く時には手術も必要とする疾患であるためできる限り早期に鑑別に挙げなければならない.【症例】68歳男性【主訴】全身倦怠感【病歴】糖尿病性腎症による末期腎不全で維持透析をしている患者.来院6日前に37℃台の発熱があり白血球 15800/μL, CRP 12.3 mg/dLだったので前医にてセフジトレンピボキシルとクラリスロマイシンが開始された.しかし,炎症反応は改善せず全身倦怠感が増悪傾向だったため当院を受診した.【所見】身体所見:心窩部を最強点とする圧痛あり CT:胃の全周性壁肥厚あり 上部消化管内視鏡検査:胃粘膜皺襞の発赤,浮腫あり.白苔を伴った小潰瘍が多発 胃粘膜培養:細菌の発育無し 病理検査:炎症細胞の浸潤あり 【経過】CTで胃の全周性肥厚を認めたため胃蜂窩織炎を疑い,第1病日に上部消化管内視鏡検査を施行した.内視鏡所見より胃蜂窩織炎の可能性が高いと判断し,同日よりピペラシリン・タゾバクタムおよびバンコマイシンを開始した.その後,全身状態は速やかに改善した.先行抗菌薬投与があったため胃粘膜培養で細菌は発育しなかったが,病理検査で胃蜂窩織炎に矛盾しない炎症細胞浸潤があり胃蜂窩織炎と診断した.アンピシリン・スルバクタムに変更し計14日間抗菌薬を投与して治療終了とした.【考察】胃蜂窩織炎ではCTで胃壁が全周性に肥厚する.この所見は胃蜂窩織炎に特異的ではなく4型胃癌,胃梅毒,胃悪性リンパ腫等でも同様の所見を呈することがあり注意が必要である.また内視鏡では胃粘膜皺襞の肥厚や広範な潰瘍を認める.胃蜂窩織炎はCTや内視鏡で特異的な所見は乏しいが,本症例ではCT所見から胃蜂窩織炎を鑑別のひとつに挙げた.追加の検査を行い速やかな抗菌薬投与に繋げ保存的加療を成功させることができた.【結語】CTで全周性胃壁肥厚があった際に胃蜂窩織炎を鑑別に挙げ早期治療開始を検討する必要がある.

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