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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-065] 発熱と後頸部痛を主訴に発症した頸部椎体炎・脊椎硬膜外膿瘍の1例


【背景】頸部椎体炎と脊椎硬膜外膿瘍は比較的まれな疾患であるが、治療の遅れは後遺障害につながりうるため、迅速な診断と加療が必要である。
【症例】44歳男性
【主訴】発熱、後頸部痛
【病歴】小児麻痺あり身体障害者4級を有する。アトピー性皮膚炎あるが糖尿病の既往はなし。X-1か月から右後頚部痛と腫脹を自覚し、近医を受診し抗菌加療され改善。しかし再度症状が悪化し、後頚部痛を主訴に来院した。
【所見】血圧 115/83mmHg、脈拍数 113/分、呼吸数 12回/分、体温 37.9℃、SpO2 95%(room air)、左後頚部に皮下腫瘤と同部の圧痛あり。血液検査:WBC 27000/μL、CRP 12.2 mg/dL。頸部造影CT:左椎周囲間隙に腫脹あり。頸部単純MRI:C3およびC4椎体・その周囲にT2高信号域あり。脊柱管内部、脊髄左側にも類円形のT2高信号域あり。血液培養:メチシリン感受性Staphyrococcus aureus(以下MSSA) 4/4セット陽性【経過】第1病日に頸部造影CTを施行、左後頚部リンパ節炎の診断でCEZ投与開始したが、血液培養でブドウ球菌の検出あり、VCMも追加で投与開始。第3病日に症状改善なく、頸部MRIを撮影した。左C2-3の椎体及び椎体周囲、脊柱管内部にもT2高信号域が確認され、椎体炎・椎体周囲炎および硬膜外膿瘍と診断、当院では対応困難と判断し、第3病日に他院転院した。転院後当院の血液培養でMSSAが同定され転院先へ連絡し、同院ではCEZ単剤へ変更、検査値・症状とも改善傾向になった。第9病日に頸部MRIで膿瘍は縮小傾向、ドレナージ手術の適応なしと判断され、第16病日に抗菌加療継続のため当院に再転院。抗菌加療を継続し、第38病日のMRIで膿瘍はさらに縮小傾向、抗菌加療は6週間で終了し、第43病日に自宅退院。
【考察】発熱、後頚部痛という一般的な主訴で来院した頸部椎体炎・脊椎硬膜外膿瘍の1例を経験した。本疾患は糖尿病のある症例に好発するが本例では糖尿病はなかった。菌の侵入門戸はアトピー性皮膚炎と推測された。
【結語】比較的一般的な症状から重篤な機能障害を残しうる疾患が診断された、教訓的な一例であった。

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