[P-069] SIRVAに対し治打撲一方が著効した症例
【緒言】SIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)とは、ワクチン接種後に生じる肩の急性炎症であり、肩の疼痛の持続、可動域制限がみられる。症状はワクチン投与から48時間以内に始まり、数か月持続する場合が多いとされるが長期になることがある。治療としては消炎鎮痛剤の内服、ステロイド注射、理学療法など保存的な治療選択肢がある。【症例1】50歳代男性、COVID-19ワクチン接種1週間後から疼痛あり、1ヶ月後にピークに達した。接種部位の発赤、腫脹はないが、疼痛のため左肩関節の回旋制限を認めた。SIRVAと診断し、治打撲一方にて加療開始した。1週間後、症状は半分程度まで改善し、肩関節の可動域も増加した。2か月後、後遺症を残さず完治した。【症例2】60歳代男性、来院3ヶ月前にCOVID-19ワクチン接種を受けた。その翌日から、接種部周囲の疼痛あり。症状はやや改善傾向にあったが、消退せず当院紹介となる。疼痛部の発赤、腫脹なく、造影CTでは明らかな疼痛原因は特定できず。SIRVAと診断し、治打撲一方を開始した。1週間後、症状は2割程度まで改善し、1ヶ月後症状は消退した。【考察】海外においてインフルエンザワクチンは筋肉注射されるため、SIRVAの報告が多いが、本邦ではCOVID-19にて周知されるようになった。提示した症例はワクチン摂取後に典型的な疼痛症状を呈し、SIRVAと診断し、駆瘀血剤として治打撲一方を選択した。治打撲一方は『本朝経験方』で香川修庵の創案とされる。本処方は川骨、樸樕、川芎、桂皮、丁子、大黄、甘草から成る。川骨は「破血止血」の作用があり、内出血吸収、組織修復作用を持つ。樸樕は「悪瘡の薬」として用いられ、鎮痛、解毒、消炎、収斂、止血作用を持つ。川芎は活血利気、消炎作用、桂皮は血行促進作用、大黄は血分の実熱を瀉し、組織の分解物老廃物を瀉下排泄する。【結語】SIRVAに対し治打撲一方が著効した症例を経験した。