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2月18日 (土)

プログラム

抄録





[P-070] 下垂体機能低下症を契機に診断された下垂体膿瘍を疑う1例


【背景】下垂体膿瘍は稀な病態であり報告に値すると考えた。【症例】77歳女性【主訴】継続する嘔気と倦怠感【病歴】食欲不振と体重減少から前医で入院となり、血液検査でNa 125mEq/L、随時血糖68mg/dLと低値であることから副腎不全が疑われた。【所見】ACTH 1.9 pg/mL、cortisol 6.5μg/dLとともに低値であり、hydrocortisone投与で症状が改善することから下垂体機能低下症が疑われたために当院に紹介となる。下垂体ホルモン基礎値はACTH 14.4pg/mL、cortisol 3.27 μg/dL、TSH 2.62 mIU/L、FT3 2.37 pg/mL、T4 0.88 ng/dL、GH 0.27 ng/mL、IGF-1 49 ng/mL、LH 0.3IU/L、FSH 1.6 IU/L、E2<10.0 pg/mL、PRL 9.9 ng/mLであり汎下垂体機能低下症と診断した。下垂体MRIにて下垂体は腫大しておりT1強調像で等信号、T2強調像で淡い高信号、拡散強調像で拡散抑制を示し造影では下垂体全体として辺縁のみ造影され内部は造影効果のない嚢胞性病変で、蝶形骨洞は粘膜肥厚と粘液貯留があることから、蝶形骨洞炎から波及した下垂体膿瘍が疑われた。入院の上で実施した検査では尿中cortisol 1.7μg/dayと低値で、負荷試験ではインスリン低血糖試験でACTH・GHは無反応、GHRP-2負荷試験でGHは無反応、LHRH負荷試験ではLH・FSHともに無反応、TRH負荷試験でTSH・PRLは正常反応であり、重症型成長ホルモン分泌不全症の診断基準を満たした。【経過】ホルモン補充としてはhydrocortisone投与のみで加療を行っているが、今後GH治療も考慮している。下垂体病変については頭痛や視力低下なく、発熱や炎症反応所見もないため、特に抗生剤を投与することなく、脳神経外科と連携しながらMRIで経過観察中である。【考察】下垂体膿瘍は下垂体疾患のうち約1%程度とされる稀な病態で、頭痛や視野障害が主症状とされるが、今回の症例ではこれらの症状に乏しかった。約15%にラトケ嚢胞を伴うとされ、この症例でも、もともとラトケ嚢胞が存在したところに副鼻腔炎が下垂体に波及し膿瘍を形成したのではないかと推察している。【結語】われわれは稀な下垂体膿瘍の症例を経験した。

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