Diagnostic Excellence
・Diagnostic Excellence”卓越した診断”とはなにか?実は、さっぱりわからない、しかし実に面白い(ガリレオ風に)と確信している。医師にとって診断とは臨床医学の真髄であり、もっとも難しいものである。そもそも、この捉えようがなく、言語化も難しい知的作業を教育的に語るということはかなり勇気の要る作業だ。さらに言えば、志水太郎学会長が本学術大会のメインテーマとして掲げている。これは、私財を売ってでも全エネルギーを投入し、力を出し切る内容だと覚悟を決めた。
そんな序文は置いておく。今後新しい概念として間違いなく我が国でも流行るであろう”Diagnostic Excellence”とは、患者の状態について正確かつ的確な説明を得るための最適なプロセスと定義されている。最適なプロセスとは、タイムリーかつ、費用対効果が高く、サービスの受け手である患者が納得と理解しやすい必要がある。そう、つまり診断とは、医師一人の仕事ではなく医療スタッフ全員との、そして患者本人との協働作業でもある。
私としてはDiagnostic Excellenceに関して2つの側面を考えている。一つはサイエンティフィックに、もう一つはアーティスティックに。両者は同時に語られなければならない。前者は気持ちが良い。シンプルだ。文献を読めばわかる。我々も研究データで示しつづけていけば良いだけだ。
しかし後者はどうだろう?これは、生涯をかけて訓練していく得体の知れない技のようにさえ映るかもしれない。例えば、宮本武蔵五輪の書水の巻を紐解く。心を広く、真っ直ぐにして、緊張しすぎる事もなく、緩む事もない心で闘いに臨むことを「水の心」と呼ぶ。診断においては、その水の心はいついかなる時も美しく澄んでいなければならず、これぞDiagnostic Excellenceに通ずる道のようにも感じる。
Diagnostic Excellenceとは、恐らく臨床家としての自己との闘いであり、自らを写しだす鏡のようなものである。しかし、そんな抽象的なことを抄録で書いてしまうと誰も見に来てくれないのではないかと不安になったので、短時間で分かりやすく明日から診断への考え方が変わるように文献を交えて提示していくこととする。