総合診療医にとっての緩和ケア
がん患者への緩和ケア診療は、困難事例は、緩和医療専門医など専門家に任せてよいと考えられるが、約8割の症例は基本的緩和ケアにて対応可能であろう。この基本的緩和ケアは約30種ほどのエッセンシャルドラッグ(必須薬)の組み合わせにて対応可能である。その中でも重要な麻薬鎮痛薬に関しては、服薬回数や作用時間を理解しておきたい。典型的な症例を提示し、説明してみたい。
また、総合診療医だからこそ出来る緩和領域での可能性を示してみる。①疾患に囚われずに、病歴を広く聞く、②臓器に囚われずに、全身の診察を行う、③家族の意向や状況にも関心を持つ、④終末期の患者およびその家族への心理的配慮、即ち「悲嘆のケア、家族ケア」の実践、⑤患者の療養している地域の医療提供体制にも関心を持つ、その地域の「緩和ケア地域連携」の調整役を担う、等。
更に、これからの医療ニーズとして期待されている分野が「非がん疾患の緩和ケア」である。心不全・呼吸不全・腎不全・肝不全・神経難病の終末期に、その環境下での適切な苦痛緩和を提供し、「その人らしい終末期の時間を過ごす」為のサポートが今後ますます必要とされる。その中でも、心不全患者の増加は疫学的に予測されており、心不全診療の中においても、リハビリとともに、「心不全の緩和ケア」は重要視されている。循環器チームと緩和ケアチームの協働も期待される。
また、病気を持つ人々も住み慣れた地域での療養生活を継続できるような地域医療提供体制(地域包括ケアシステムや地域医師会活動など)への積極的な参加も期待される。
臓器や疾患に拘らずに、患者の心身を、そして家族までも一体として診ることが多い「総合診療医」の一つのキャリア、サブスペシャリティとしての「緩和ケア(総合診療医だから出来る緩和ケア)」を紹介してみたい。