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2月19日 (日)

プログラム

抄録





日本人におけるCOVID-19感染後の予後に対する体組成の影響


【背景・目的】肥満とCOVID-19の重症化や転帰の悪化の関係は、世界のほとんどの研究では体格指数(BMI)によって評価されている。肥満の割合が欧米に比較して少ない日本人においてもBMIを指標とした評価が妥当であるか、日本人患者のCOVID-19の臨床経過に対する大腰筋の筋肉量指数(PMI)および筋肉内脂肪組織含有量(IMAC)を含む体組成の影響を調査した。
【方法】2020年8月から2021年9月までに三重大学附属病院にCOVID-19で入院した患者を対象とし、検査データ及び体組成を集積した。肥満度を0~4に分類し、挿管と人工呼吸が必要な患者を重症と分類した。サブ解析として、重症化症例の死亡リスク、肥満度別の重症化について評価した。
【結果】76名が解析の対象となり、重症化の有無に関連する因子として、BMI、皮下脂肪に有意差を認めたが、Liver-Spleen RatioとPMI、IMACには有意差を認めなかった。重症化した48名に対する死亡リスクは、BMIの有意差は認めなかった。肥満度と重症化の解析では、肥満度0の集団でIMACの高値が重症化に関連した。
【考察】今回の解析では日本人においても重症化するリスク因子として既報の研究と同様にBMIに有意差を認めた。しかし重症化症例のみの検討ではBMIは生死に関連しなかった。また、肥満度0の集団においては、筋肉の質が悪いほど重症化する症例が増加していると考えられた。今後もコロナウイルスの構造変異や未知のウイルスが世界的に流行する可能性はあり、その際の重症化のリスクとしてまずは慢性の呼吸器疾患、糖尿病や免疫不全等の基礎疾患を有する者、そして肥満者が予測される。肥満の基準としてはBMIが一般的であるが、肥満の割合が欧米に比較して少ない日本においては、非肥満症例でIMACが重症化予測の指標のひとつになる可能性が示唆された。
【結語】日本人において体組成、特に筋肉の質とCOVID-19の重症化の関連があると考えられた。

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