感冒患者では痰が絡む咳の半数以上が湿性咳嗽ではない。
【背景・目的】咳嗽患者における湿性咳嗽は乾性咳嗽と区別して鑑別診断をあげることになっている。しかし、湿性咳嗽は明らかな量の排痰が必要であるが、湿性咳嗽を痰の絡む咳と誤解され診断されていることが多い。今回一般内科外来で感冒患者と診断するに適した患者における痰の排出と痰の絡み感の一致率について検討した。【方法】鼻、咳、咽の3症状のうち2症状以上ある感冒症状のため受診し、発病から3週間以内の抗生剤投薬がなく、以後再診がないか、再診時他科のカルテを含め感冒症状が3週間以内の場合感冒と診断した。特定の医師に受診しデータベース登録され、2014/4/1~2020/1/6の期間の感冒666例について解析した。咳嗽、痰のからみ感、痰の排出の症状を「-,±,+,++」の各々4段階で評価し解析に用いた。頻度の有意差は4段階で症状を評価しWilcoxon Signed-rank TestでP<0.001を有意とした。相関関係はSpearmanの順位相関を用いた。【結果】症状の頻度は「-,±,+,++」順で咳嗽7%,11%,77%,4%、痰の絡み感39%,15%,45%,0%、痰の排出42%,29%,29%,1%であった。痰の絡み感と痰の排出の両者の記載のあるもののうち痰の絡み感のある患者245例中95例(39%)のみが痰の排出があり、痰の排出のある患者155例中95例(61%)が痰の絡み感があった。咳嗽と他の2症状に関しては相関関係を認めなかったが、痰の絡み感と痰の排出はP<0.01,R=0.30と弱い相関を認めた。【考察】単一施設のデータであり限界があるが600症例以上の結果であり意味があると考えられた。症状の記載には問診により入力しているため、アンケート調査とは差異がある可能性があるが、実臨床の現場により近いデータであると考えられた。【結語】湿性咳嗽を診断する場合には痰の絡み感を痰の排出する湿性咳嗽と考えてはいけない。