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2月19日 (日)

プログラム

抄録





COVID-19罹患後症状と血清亜鉛濃度の関連


【背景・目的】COVID-19は急性期後も長期にわたり様々な症状がみられることがあり、COVID-19罹患後症状と呼ばれている。低亜鉛血症は、嗅覚・味覚障害や脱毛といったCOVID-19罹患後症状でよくみられる症状の原因になりえる。また慢性の炎症性疾患でも低亜鉛血症を認めることがあるため、COVID-19罹患後症状の診療では血清亜鉛濃度を測定し、低値であれば補充される例も少なくない。この血清亜鉛濃度とCOVID-19罹患後症状との関連を明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】2021年2月~2022年2月に岡山大学病院コロナ・アフターケア外来を受診した全ての患者のうち、経口亜鉛製剤および亜鉛サプリメント服用患者は除外した194名を対象に後ろ向き観察研究を実施した。
【結果】低亜鉛血症を血清亜鉛70μg/dL未満と定義すると、43人(22.2%)が低亜鉛群に該当し、男性16人(37.2%)、女性27人(62.8%)が含まれていた。有意差はないものの低亜鉛群(血清亜鉛中央値63µg/dL)では非低亜鉛群(79µg/dL)に比して全身倦怠感(39.5% vs 55.6%)、嗅覚障害(23.3% vs 35.1%)、味覚障害(16.3% vs 30.5%)、脱毛(11.6% vs 26.3%)とCOVID-19罹患後の代表的症状を有する患者の割合がいずれも少なかった。
【考察】COVID-19以外の低亜鉛血症での報告とは矛盾して本研究ではむしろ低亜鉛の方が各種症状が少なく、血清亜鉛はCOVID-19罹患後の症状には関与していない可能性が示唆された。そもそもCOVID-19ではSARS-CoV-2ウイルスそのものがACE2受容体を介して、嗅神経細胞や味蕾細胞を障害することで嗅覚・味覚障害を来すと報告され、また、脱毛についてもそのほとんどがCOVID-19罹患に伴う直接的ないし間接的なストレスによる休止期脱毛ではないかと考えられており、亜鉛欠乏の病態とは全く異なる機序である。今後、症例数を増やした研究や補充への反応性の観察は必要であるが、COVID-19後遺症状を持つ低亜鉛血症患者への経験的な亜鉛補充の意義は乏しい可能性があると思われた。


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