アレキサンダー病症例報告からの、症状多様性の可視化
【背景・目的】難病・希少疾患は世界で4億人とされるが疾患数は1万を超え、一つの病名に対する患者数は少ない。希少疾患に関して学ぶリソースは教科書、学会、論文となり、専門医も少なく診断までの期間は平均5-7年と遅れ易いとされる。ここでさらに、稀な疾患が、稀な症状をとる場合、診断は非常に難しくなる。また難病・希少疾患と診断がついたとしても、その疾患の中で、”どのくらい稀な症例”なのか?という問いに答えることは難しい。そこで、希少疾患の一つであるアレキサンダー病(AxD)の英文症例報告を用い、症例ごとの症状の可視化をトライし、目の前の患者さんが”どのくらい稀な症例”なのか?に答えられるリソースが出来るかを検討した。【方法】約200例のAxDの症例報告から、臨床情報をテキストデータとして構造化して抽出し、PubCaseFinderにある半自動アノテーション機能を用いアノテーションを行った。AxDの症例ごとの、症状や症状の組み合わせの多様性を可視化し、症状によるクラスタリングをトライした。また開発中の症例登録システムを用いたpehnopachket形式でのデータ出力と解析も行った。【結果】多様なデータ項目がありスパースなためクラスタリングは困難であり、症状のカテゴリー化などが必要と考えられた。症状の時系列データの処理も課題となった。また、英文症例報告は構造化されておらず、データの構造化に多くのエフォートを要した。【考察】症例報告は出版バイアスもあり、難病・希少疾患の全体像を見る上では、リアルワールドデータの集積が必要である。しかし取り組みの結果、過去の症例報告のデータを十分に活用出来ていない現状が、英文、日本語の両方に存在することが明らかとなった。臨床テキストデータの活用には、現場の医療者とデータベースエンジニアの両者がより歩みよる必要があると考えられた。【結語】医療者とエンジニアの協働による、簡便な臨床データの構造化ツールや、アノテーションツール、そして、症例登録システムの開発や活用が望まれる。