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2月19日 (日)

プログラム

抄録





低ホスファターゼ症に気づくには、ここが大事


低ホスファターゼ症(HPP)は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(ALP)の欠損により引き起こされる遺伝性疾患である。その結果、ALPの基質であるphosphoethanolamine, ピロリン酸, ピリドキサールリン酸の上昇がみられる。通常、常染色体潜性(劣性)遺伝性であるが、稀に常染色体顕性(優性)遺伝性もある。骨X線検査で骨の低石灰化、くる病様変化がみられることが多いが、重症度の違いにより症状は多彩であり、診断には遺伝子検査が必要なことも多い。特異的な治療法である酵素補充療法が開発され、予後が改善してきている。HPPは治療可能な疾患となったことから、その診断が重要となる。HPPは小児期のみならず、成人期にも発症するが、小児期発症のHPPが骨・歯症状を中心とするのに対して、成人期発症HPPでは、関節・筋症状が主体となることがあり、関節リウマチなど炎症性疾患と診断されていることも多い。日本では成人期発症HPPの報告が北米に比べて少なく、診断に至っていない症例が多い可能性がある。診断の端緒となるのが血清ALPの低値であるが、一般的に血清ALPの高値は注意が向くが低値は見過ごされることが多い。また、小児期発症のHPP患者が成人になった場合に、過去の症状が的確に伝えられていない事例も存在する。突然変異例は少なく、家族歴の聴取は重要となるが、これも家系内発症者が患者、主治医双方に把握されていない例がある。本シンポジウムを通じて、HPPの臨床像と診断・治療についての理解が進むことが期待される。

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