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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[O-029] 豪雨災害は高齢者の介護施設入所のリスクを増加させる:介護レセプト等情報を用いた過去起点コホート研究


背景
近年地球温暖化により災害頻度が増しており、災害弱者である高齢者をどのように守るかが世界的関心事となっている。施設への入所は高齢者の生活環境を一変させるライフイベントであるが、災害が高齢者の施設入所リスクを高めるかどうかを調べた研究はない。
目的
本研究では、自然災害がどの程度高齢者の施設入所に影響を与えるか検討した。
方法
2018年6月末に発生した日本で最も被害の大きかった水害の一つである西日本豪雨災害の被災地住民の過去起点コホート研究を行った。データは厚生労働省が所有する悉皆性の高い介護保険総合データベースより、2018年5月より12月までの期間、被災による影響が大きかった西日本の3県の住民を抽出した。このデータ中で被災した個人を特定し、年齢、性別、認知機能、ADL, 食事形態の各変数で調整した被災による施設入所のハザード比を算出した。また各共変量についてサブグループ解析を行い、被災のハザード比および交互作用を評価した。
結果
災害時点で施設入所していない187861人の介護サービス利用高齢者のうち1.1%の2156人が自治体により認定された直接被災者であった。被災群の15%が被災後半年間で施設入所していたのに対し非被災群は4.4%であり、被災者は非被災者に比べて施設入所のリスクが有意に高かった(調整ハザード比3.28: 95%CI, 3.01-3.90)。またサブグループ解析では、食事全介助が必要な高齢者はそうでない高齢者に比べて、被災による施設入所のリスクが増加する傾向があった(調整HR, 6.13; 95% CI 3.76-9.99 versus 3.19; 2.83-3.60)。被災と食事摂取の間には有意な交互作用を認めた。
結語
自然災害は高齢者の施設入所リスクを増加させていた。特に自力で食事摂取できない高齢者でその傾向が顕著であった。医療者および政策立案者は災害時に介護施設需要が増大することを認識し、急なニーズ変化に対応できるような柔軟性を持った施設の構造および運営体制の構築を行い、災害に備えることが、成熟した福祉国家の形成のために重要と考えられた。











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