[O-030] 日本における医師と看護師の共感の比較
【背景・目的】医療者による患者への共感は、急性期・慢性期双方の臨床アウトカムの向上に加え、医療者の幸福度向上、バーンアウトの防止等に数多く寄与する事がわかっている。先行研究では医師と看護師の共感を比較し有意差はないとされているが、医療者個人レベルの関連要因が調査されていなかった。本研究の目的は、日本の医師と看護師の共感を比較することで、関連要因を明らかにすることである。【方法】本研究は全国横断調査である。医師と看護師を対象に、共感測定ツールである邦訳ジェファーソン尺度(JSPE)と共感関連因子調査票を用いてウェブアンケート調査を実施した。共感関連因子調査票の内容は、年齢、性別、所属する診療科、役職の有無、病床数、親との居住距離、卒後年数、僻地医療従事、子供の有無、親の合計年収、親の職業を含めた。JSPEの合計スコアと各関連要因をカイ二乗検定とウィルコクソンの順位和検定を用いて比較した。さらに共感に関連する因子を調整し検討するために、多変量線形回帰分析を行った。【結果】医師5,441名、看護師965名を解析対象とした。JSPEスコアは、医師で中央値100点(四分位範囲87-112点)、看護師で中央値111点(同103-120点)と医師のスコアが有意に低かった(p<0.001)。関連要因では女性(p<0.001)、子供がいる者(p=0.01)、親の合計年収が1000万円以上の者(p=0.028)、父親と死別・離別している者(p=0.03)はスコアが有意に高かった。【考察】医師のJSPEスコアは中央値11点の差を開き看護師より有意に低かった。これまでの先行研究では、性別、子供の有無、リーダーシップ等の要因がJSPEの値と有意に関連していることが明らかとなっているが、本研究では性別、子供の有無に加えて、親の合計年収、父親との死別・離別等も関連していることが明らかとなった。【結語】医師のJSPEスコアは看護師に比べ低く、性別、子供の有無、親の合計年収、父親との死別・離別が共感に関連していた。