[O-031] アレルギー疾患と鑑別を要する多種化学物質過敏症(疫学調査および腸内細菌叢解析)
【背景】難治性喘息や重症薬剤・食物アレルギーと鑑別を要する多種化学物質過敏症/特発性環境不耐症の疾患認知度は低く、「難治性喘息」と誤診され、全身性ステロイド加療されている症例に遭遇する。また、客観的診断基準は確立されていないが、自己記入式調査票 Quick Environmental Exposure and Sensitivity Inventory (QEESI)は、国際的に用いられており、日本語版も有用であるが、活用されていない。疾患メカニズムは明らかにされていないが、中枢神経の関与が提唱されており、中枢神経と腸の腸脳連関は他疾患で報告されているが、化学物質過敏症の腸内細菌の関係は明らかにされていない。
【目的】QEESIを用いて、全国規模でのWEB調査により患者背景を明らかにし、化学物質過敏症と健常者における腸内細菌叢の差違を明らかにする
【方法】2016年3月に15万人を対象としたWEB調査を行った。2018年1月から2018年3月までに国立病院機構相模原病院を受診した化学物質過敏症患者(n=30)から糞便採取を行い、腸内細菌叢メタゲノム解析を用いて、健常者データ(年齢性別マッチング)と比較検討した。
【結果】WEB調査での化学物質過敏症有病率は0.9%であり、アレルギー疾患の合併率が、健常群と比較し化学物質過敏症群で有意に高かった。また、多重ロジスティック回帰分析では、帝王切開での出生歴が、化学物質過敏症と有意に関連した。腸内細菌叢解析では、化学物質過敏症群と健常群者間では、α・β多様性に有意差は認めなかった。菌種組成(種レベル)で有意差を認めたのは、Akkermansia muciniphilaが化学物質過敏症群で有意に豊富であり、Faecalibacterium prausnitziiは有意に乏しかった。
【結語】QEESIはWEB調査でも有用であり、化学物質過敏症の発症に腸脳連関の可能性が示唆され、治療介入のターゲットとなる可能性がある。