[O-034] 診断能力評価における学習管理システムMoodleを用いたピアロールプレイの有用性
【背景・目的】臨床推論能力を簡便に詳細に評価することは概略評価やビデオ評価では困難である。学習管理システムMoodleを用いたピアロールプレイの有用性を検討する。【方法】富山大学医学生で2018年入学、2021年度に臨床医学統合に参加した4年生(4年コホート)と2017年入学、2021年度に選択制臨床実習中シミュレーション実習に参加した6年生(6年コホート)が実施した各自のスマートフォンとMoodleを用いたピアロールプレイ結果14シナリオの中から、「51歳、男性、胸痛」を解析対象とした。2コホートにおける、「初期対応」「病歴」「診察」「その状況で想定される鑑別疾患」などの各項目の実施率、識別指数(得点上位者と下位者を区別する指標)を比較し、2コホート間及び、各項目間で比較した。【結果】4年コホート(登録率60%)の平均点79.5%、項目毎の実施率、識別指数はそれぞれ、「初期対応」89.6%、78.3%、「病歴」96.0%、51.9%、「患者視点からの評価」50.8%、48.0%、「診察」88.1%、56.0%、「鑑別」67.2%、76.3%、「必要な検査」86.1%、70.2%、「追加の検査、治療方針」80.4%、69.6%であった。6年コホート(登録率20%)の平均点54.4%、項目毎の実施率、識別指数はそれぞれ、「初期対応」51.9%、72.1%、「病歴」61.2%、71.6%、「患者視点からの評価」33.3%、7.6%、「診察」66.7%、60.2%、「鑑別」44.3%、77.4%、「必要な検査」67.5%、67.3%、「追加の検査、治療方針」56.0%、62.2%であった。【考察】スマートフォンとMoodleを用いたピアロールプレイを行うことで、多数の学習者の臨床推論の過程を自動で収集、解析することが可能であった。4年コホートの方が実施率が高い理由として、医師役がシナリオを見ながら実施したり、評価の厳密性に慣れていなかったことが要因と考えられた。一方、2つのコホートにおいて、「初期対応」(重症度判定とその対応)と「鑑別」(鑑別疾患を適切に列挙する能力)が識別指数が高く、診断を含めた臨床推論能力の評価に適している可能性が示唆された。【結語】100人単位の学習者を対象に診断を含めた臨床推論の訓練とその評価を行う上で、各自のスマートフォンと学習管理システムMoodleを用いたピアロールプレイが有用であると考えられた。