[O-032] 本邦の剖検事例における診断エラーの検討
【背景】剖検は診断エラーの検出に有用であり、剖検の知見は将来のエラーを減らす可能性がある。一方で、剖検診断に基づいた診断エラーの本邦からの報告は少ない。そこで私たちは本邦の剖検報告での診断エラーを詳述した。
【方法】本研究は日本内科学会地方会データベースを用いた記述研究である。2016年1月から2020年12月までの剖検症例を対象とし、Goldman基準を用いて診断エラーを判断した。Class Iエラーを診断が死亡前に判明すれば予後改善や治療の余地があったと、Class IIエラーを死亡または治療前に診断が判明しても予後に影響しなかったものと定義した。
【結果】本研究では剖検された288症例を組み入れた。診断エラーが確認されたのは113 症例(39.2%, 95%信頼区間33.6-45.1)で、内訳は悪性腫瘍が 35 (31.0%)症例、感染症が28 (24.8%)症例、心血管系が15 (13.3%)症例だった。113の診断エラー症例のうち45 (39.8%)症例が Class Iエラー、68 (60.2%) 症例がClass IIエラーだった。45のClass Iエラーのうち感染症は22 (48.9%)症例を占めた。
【結論】本研究での診断エラーの頻度は39.2%だった。剖検は診断エラーの検出に重要な医療の質指標である。