[O-037] System1とSystem2を駆使して診断に至った環軸椎回旋位固定の一例
【背景】環軸椎回旋位固定は6歳から12歳の小児に好発し、後天性斜頸の中で比較的稀であると考えられている。【症例】生来健康な10歳女児【主訴】頚部痛、頚部自動運動困難【病歴】X-4日より頚部の疼痛が出現した。疼痛が増悪し、頚部が左に傾いてきたためX-3日に近医受診し、鎮痛薬が処方された。疼痛がさらに増悪し、頚部が左に傾いた状態で動かせなくなったため、X日に再度近医を受診し、当院へ紹介受診となった。明らかな外傷歴、咽頭痛などの上気道炎の症状、発熱、悪寒戦慄、頭痛、呼吸困難、嚥下困難、体重減少、盗汗はなかった。【所見】頚椎は30°左屈位、20°右回旋位だった。両上肢深部腱反射正常であり、上下肢の知覚障害や運動障害、開口障害、四肢筋緊張や四肢ジストニアなどの症状を認めなかった。【経過】環軸椎回旋位固定と診断し、頚椎ソフトカラーの装着、鎮痛薬処方、安静指示を行った。X+3日の外来受診時には頚部痛は軽減していた。X+10日の外来受診時には頚椎は中間位に戻り、頚部可動域制限は解消されていたため頚椎カラーを除去し終診とした。【考察】診断プロセスの視点で、症例を振り返ってみる。初療医は分析的思考、いわゆるSystem2に基づいて、本症例を診断した。小児の後天性斜頸の原因疾患を二次文献で検索し、頸部筋群の外傷や炎症、上気道炎などと並んで、環軸椎回旋位固定を鑑別に挙げた。除外すべき疾患として、咽後膿瘍やLemierre症候群 などの深頸部感染症や、脊髄外傷、脊椎硬膜外血腫 、中枢神経系腫瘍 などが該当した。病歴や身体所見からこれらの疾患を可及的に除外し、最終的に最も可能性の高い疾患は環軸椎回旋位固定であると診断した。一方で上級医は、年齢と主訴のみから環軸椎回旋位固定を鑑別に挙げた。直観的思考と分析的思考の双方で結論が一致し、環軸椎回旋位固定の診断に至った。【結語】System1とSystem2を駆使して診断に至った環軸椎回旋位固定の一例を経験した。