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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[O-039] 陰部神経痛を呈した仙骨部腫瘍性病変の一例


【背景】仙椎レベルの脊柱管に発生する腫瘍の代表例として神経鞘腫や仙骨嚢胞がある.無症状で偶発的に指摘されることが多いが,神経根症状や膀胱直腸障害など症状を認める場合もある.【症例】64歳女性【主訴】会陰部左側と膣の奥の痛み
【病歴】来院1カ月前より膣の奥の痛み,会陰部左側の痛みを自覚した.近医を受診し,原因不明であるために当院産婦人科を受診した.婦人科診察で異常を認めないために内科コンサルトとなった.新規の排尿障害や便秘,歩行障害は認めない.
【所見】
意識清明.体温36.8℃,血圧141/89mmHg,脈拍92回/分,呼吸数12回/分.身体診察で体幹部,会陰部,下肢に明らかな異常を認めない.四肢の筋力低下,感覚障害は認めない.血算,腎機能,電解質,尿検査は明らかな異常を認めない.腰椎仙骨MRI:S2椎体の高さで脊柱管内左側,硬膜外に12㎜の結節を認める.内部にリング状の構造を認め,S3神経根由来の神経原性腫瘍を疑う.
【経過】
会陰部左側,膣の痛みが陰部神経痛を示唆する症状であること,MRIで指摘したS3神経根に隣接する腫瘍性病変を認めたことから仙骨部腫瘍性病変による症状と判断した.患者,整形外科と治療方針について協議し,薬物療法と画像追跡による評価を行う方針とした.ミロガバリン等の薬物療法により症状の改善を得た.
【考察】
本例は,陰部神経痛として発症した仙骨部腫瘍性病変の一例である.疼痛の訴える部位(会陰部,膣)に明らかな異常を指摘できないことから陰部神経痛を疑った.S2~S4を絞扼,圧迫する病変を評価するためにMRIを用いて診断に至った.正確な診断には組織診断を必要であるが,画像所見から神経鞘腫をより疑う.神経障害性疼痛としてミロガバリン等の効果を得られる可能性がある.
【結語】
疼痛を有する部位,臓器に視触診で異常を認めない症例では神経痛を鑑別に入れ,神経絞扼・圧迫する病変の精査を行うことが早期診断に貢献する.

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