[O-040] 肺野陰影の出現と消失を繰り返したVEXAS症候群の1例
【背景】VEXAS(vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic)症候群は2020年にBeck DBらによって報告されたUBA1遺伝子の体細胞変異によって引き起こされる自己炎症性疾患である( Beck DB, et al. Somatic Mutations in UBA1 and Severe Adult-Onset Autoinflammatory Disease. N Engl J Med. 2020 Oct 27).【症例】83歳男性 【主訴】発熱,呼吸困難 【病歴】X-1年1月に発熱が続き両肺に多発するすりガラス陰影を認めたため前医で入院加療となった. しかし,改善を認めず,抗菌薬不応とのことで当院へ転院となった.転院後ネイザルハイフローでの呼吸管理を要する呼吸不全を認め,画像所見より器質化肺炎を疑いステロイドパルス療法で治療介入した.その後はステロイドを漸減し,解熱して呼吸不全改善し,肺野の陰影も改善した.X-1年7月にプレドニゾロン12.5mg/日に漸減したところ38℃台の発熱が続き肺野のすりガラス陰影顕在化した.ステロイド増量で臨床所見および画像所見の改善を認めたが,その後もプレドニゾロン15mg/日より減量で再燃することが続いた.X年5月にはプレドニゾロン減量後に発熱,肺野陰影の出現に加え,皮膚に紅斑が出現したため再入院となった.【経過】1) 約1年前から繰り返す高熱,2) 肺陰影の出現・消退を繰り返す,3) 皮膚に紅斑を認め皮膚生検ではSweet病が考えられる,4) 3系統の血球減少を認め骨髄細胞に空胞像が疑われる,5) プレドニゾロン15mg/日よりの漸減で疾患コントロールが困難といった特徴的な所見を呈した.この症例の遺伝子検索をしたところUBA1遺伝子変異を認め,VEXAS症候群と診断した.【考察】VEXAS症候群は炎症所見を伴う骨髄異形成症候群,静脈血栓症,再発性多発軟骨炎などで診断されたことが報告されている.多くの症例で肺野の陰影を呈するとされるが,主たる臨床所見として報告された症例は殆どない.VEXAS症候群は発見から数年しか経っていない新たな疾患概念で認知度は低い.今回の症例のように肺野の陰影出現が主な臨床所見となりうることは知られておらず,貴重な症例であるため報告する.【結語】発熱および肺野陰影の出現が主となる臨床所見であったVEXAS症候群の1例を経験した.