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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-071] 腰痛を唯一の症状とした微小な腎細胞癌の一例


【症例】75歳女性【主訴】腰痛
【現病歴】X年2月末から腰痛を自覚、鎮痛薬無効であり4月初旬から腰部神経根ブロックを施行されるも改善なかった。経過中に撮像された腰椎MRIで多発溶骨性病変を認め、精査目的に6月30日当院紹介入院となった。
【経過】体幹部造影CTでは左腎に15mm大と小さな造影効果に乏しい低吸収腫瘤を認めるのみで、上・下部内視鏡でも悪性腫瘍を示唆する所見は認めなかった。Hgb 11.7g/dL、補正Ca 10.3mg/dLの軽度貧血・高Ca血症を認め多発性骨髄腫も鑑別としたが、A/G比は正常で血中M蛋白や尿中Bence-Jones蛋白の検出もなく同症は否定的であった。FDG-PETでは多発骨集積を認め、やはり悪性腫瘍の骨転移を第一に疑い乳腺MRI、甲状腺エコー、婦人科内診、骨盤部MRIを追加し全身検索を行ったが原発巣の特定は出来なかった。PET集積を認めた左腸骨翼の骨外病変を生検したところ腎細胞癌を疑う淡明・好酸性の細胞質を有するPAX8陽性上皮性腫瘍の所見を得た。
【考察】腰痛を自覚症状とし診断までに時間と多数の検査を要した腎癌・多発骨転移の症例であった。腰痛への画像検索が遅れたこと、小さな腎癌であれば多発転移を来す可能性は低いとアンカリングし、より稀な原因を検索したことがその要因と思われた。腰痛の原因として悪性腫瘍は数%程度と高頻度ではないが、本例の様に高齢や難治性などは危険因子として画像評価が推奨されており、より早期に画像検査をすべき症例であった。また本例の様に40mm未満とT1サイズの腎癌であっても組織型によっては最大20~30%は遠隔転移の可能性があり、そもそも腎細胞癌の古典的三徴である血尿、側腹部痛、腹部腫瘤触知を呈するのはわずか10%程度で、多くが無症候で画像検査によって偶発的に発見されることを考慮すると、本例の様な腎癌としては非典型的と思える症状・経過でも多発骨病変の鑑別として十分に考慮する必要があると思われた。
【結語】高齢者の腰痛を軽視せず、正しい疫学的知識のもと悪性腫瘍も念頭に置いた対応が重要と考えられた。



















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