[P-072] 後天性血友病の2例
【症例1】
82歳 男性
顔面蒼白、傾眠傾向、左側胸部痛と同部位の皮下出血のため当院受診、Hb3.3の著明な貧血、PT正常APTT60.9と延長を認めた。入院後輸血を繰り返したが皮下出血増大、腸腰筋内血種も出現、第8凝固因子活性1.0%未満 第8因子インヒビター128.2BU/mlで後天性血友病Aと診断、ノボセブン、プレドニン投与と輸血を施行したが、皮下出血していた右上肢の皮膚びらん由来のG群溶連菌菌血症、肺炎合併、呼吸状態次第に悪化し第27病日永眠した。
【症例2】
75歳 女性
定期健康診断で貧血を指摘、逆流性食道炎に対しプロトンポンプ阻害薬処方したが、貧血さらに進行のため当院受診、全身浮腫、眼瞼結膜貧血、Hb5.1 PT 正常、APTT延長し測定不能であった。入院3日目転倒、右脛骨骨折術後右下肢著明な腫脹出現、体幹、上肢皮下出血出現、血尿、直腸潰瘍による下血繰り返し、第8凝固因子活性1.0%未満 第8因子インヒビター65.3BU/mlで後天性血友病Aと診断、ファイバ、プレドニン投与、輸血を施行したが、下血繰り返しAPTTも再延長、対応困難と判断し37病日転院となった。
【考察】
自己免疫性後天性凝固因子欠乏症は、後天的に特定の凝固因子の自己抗体(インヒビター)が生じ、出血傾向を呈する一連の疾患群で、最も高頻度の第Ⅷ因子自己抗体が生じる後天性血友病Aでも、発症頻度は100万人あたり年間1.5-2人程と言われる。比較的突然の皮下、筋肉、粘膜出血、血尿等の出血症状で発症し、出血症状はしばしば重篤、死亡率は25%前後といわれ、予後は不良である。
当院で経験した2例は当初は後天性血友病を想起できず診断に遅れが生じてしまったが、特異な症状から、もっと早期に自己免疫性後天性凝固因子欠乏症を疑えば治療開始を早めることが可能であった。希な発症頻度ではあるが、血液内科を有さない地方都市病院においても複数例経験する疾患であり、症状も重篤であるため、その存在を認知すべき疾患と考え報告した。