[P-111] 尿蛋白定性/定量検査の乖離と低ガンマグロブリン血症からBence-Jones Protein型多発性骨髄腫を疑えた一例
【背景】一般的に多発性骨髄腫(MM)は高ガンマグロブリン血症やM蛋白血症で診断されるが, Bence-Jones Protein(BJP)型はこれらを認めず診断が困難とされる. 今回, 尿蛋白定性/定量検査結果の乖離と低ガンマグロブリン血症から早期診断に至ったBJP型MMの一例を経験したため報告する.
【症例】70歳男性【主訴】背部痛, 右季肋部痛【病歴】X-2月に両背部痛が出現し近医整形外科を受診するも椎体X線検査では異常はなかった. X-1月Y日に近医で腰椎CTを施行されるも異常なく当科紹介となった. 当科外来での腰椎MRIでも椎体に異常はなく, 脊柱起立筋へのハイドロリリースでも痛みが改善せず, 激しい右季肋部痛も出現したためX月Y日に当科入院となった.【身体所見】頭頸部, 胸部に異常なし. 右季肋部にカーネット徴候陽性の圧痛あり. 脊椎叩打痛なし, 体幹回旋時の背部痛あり.【検査所見】血液検査: TP 5.7g/dL, Alb 4.0g/dL, グロブリン 1.7g/dL, Cre 1.06mg/dL, Ca 9.5mg/dL, 血清蛋白分画(Alb 64.0%, γ 9.1%, M蛋白検出せず). 尿検査: 蛋白定性 1+, 潜血 2+, 蛋白定量 695.3mg/dL. 胸椎CT: 第9胸椎に圧迫骨折あり.【経過】胸部CT検査により背部痛並びに右季肋部痛の原因は第9胸椎の圧迫骨折とそれに伴う根性疼痛と診断した. 尿蛋白定性/定量検査の乖離よりBJPの存在を疑い精査を進めた. 血清IgA 23mg/dL, IgG 430mg/dL, IgM 9mg/dLであり, 尿蛋白分画でM蛋白を, 電気泳動でBJPを認めた. 骨髄生検では骨髄腫細胞は83.4%であり, 腎生検により骨髄腫腎を認め, BJP型MMと診断した.【考察】尿試験紙蛋白定性法がアルブミンには高感度であるがIgGやBJPなどその他の蛋白には低感度であることより, 本例のように尿試験紙法で尿蛋白 1+であるも, 定量法では高度の蛋白尿を認める場合, 尿に多量のIgGやBJPが排出されていると判断される. 本例ではさらに血清ガンマグロブリンが低下していたことより, 骨髄生検の前にBJP型MMを疑うことができた. 高ガンマグロブリン血症を伴わない場合, MMの診断が遅れることも多いが, これら尿所見の乖離に注目することも重要と考える.