[P-076] 喀血を主訴に救急搬送され、画像検査から肺底動脈大動脈起始症を指摘された18歳男性の一例
【症例】18歳男性(下宿中の大学1年生)【主訴】喀血【病歴】生来健康で大学の入学時健診でも特に異常を指摘されていなかった。X年Y月Z日の15時頃から痰絡みを自覚、16時頃に突然の胸痛を自覚し、数回の咳嗽後に片手1杯程の喀血、呼吸苦が出現。近医受診し、精査加療が必要と判断され当院に救急搬送された。【身体所見】体温36.3℃、血圧129/82mmHg、脈拍90/min、呼吸数17/min、SpO2 100%(R.A)、口腔内や鼻腔内の目視できる範囲での出血なし、呼吸音は左でやや減弱。【検査所見】[COVID-19検査]抗原・PCRいずれも陰性、[血液検査]貧血や炎症反応亢進、凝固系異常なし、[胸部単純CT]左肺下葉S10に肺胞出血を疑うすりガラス陰影を認めた。[胸部造影CT]S10には血管陰影が目立ち、Th8レベルの胸部大動脈から分岐する異常血管を認めた。V10は中枢~末梢まで拡張し、A10は存在こそするが狭小化しており末梢では殆ど造影効果を認めなかった。【経過】喀血は搬送前の少量1回のみであり、来院時には既に止血が得られており、バイタルサインも安定していたが、今後大量喀血のリスクがあるため入院加療とした。ICU管理下で止血剤・降圧剤を用いて経過観察しつつ、当院では手術対応できないため、転院調整を行い、Y月Z+3日に実家近くの病院に転院とした。経過中に再度の喀血や胸部Xpにおける肺野浸潤影の出現は認めなかった。【考察】肺底動脈大動脈起始症は正常な気管支肺胞構造を有する肺底区が、正常肺動脈を欠き、大動脈からの異常血管から血液供給を受け、正常肺静脈へと灌流する先天性奇形である。気管支の走行に異常がなく、分画肺を有さない点で肺分画症と異なる。現時点での国内報告例は約40例だが、画像診断の発達に伴い発見例は増加していくと考えられ、特に比較的若年での喀血では肺底動脈大動脈起始症の可能性も考慮し、診断にあたることが重要であると考えられる。【結語】喀血を主訴に救急搬送され、胸部CTから発見された左肺底動脈大動脈起始症の一例を経験した。