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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-078] 血清CA19-9が高値を示し,治療経過とともに正常化した第2期梅毒


【背景】血清CA19-9値は膵癌や胆道癌のみならず,胆管炎などの良性疾患でも上昇することで知られる.しかし,CA19-9と梅毒との関連は報告されていない.
【症例】68歳男性
【病歴】X-20日前からの食思不振と右側腹部痛を契機に肝障害を指摘され,精査目的でX-9日に入院した.飲酒歴はなく,肝炎ウイルスおよび自己抗体などの検査も陰性で,肝障害の原因は不明だった.入院中にネフローゼ症候群(腎生検:膜性腎症)が初発し,CTで腹腔内多発リンパ節腫脹も指摘されたため,鑑別診断のためX日に当科に転科した.追加問診で,性産業従事者との無防備性交があったとのことだった.
【所見】<身体所見> 口腔内白苔なし,両手掌足底にバラ疹あり,鼠径部リンパ節腫脹あり,両下腿圧痕性浮腫あり <血液検査> WBC 10,200 /μL,Hb 8.3 g/dL,Plt 59.7 万/μl,総蛋白 4.0 g/dL,Alb 0.8 g/dL,AST 62 U/L,ALT 57 U/L,ALP 1,214 U/L,総Bil 1.5 mg/dL,γ-GTP 577 U/L,BUN 22.7 mg/dL,Cre 1.15 mg/dL,CRP 0.52 mg/dL,CEA 3.3 ng/mL,CA19-9 171 U/mL,TPAb 1,796 U/mL,RPR 132倍,HIV抗体陰性 <尿検査> 尿蛋白 12.7 g/g・Cr,硝子円柱 >100 /HPF,尿クラミジア・淋菌PCR 陰性 <画像検査> 造影CTで肝門部・左外腸骨~左鼠経リンパ節腫脹あり,体幹部に明らかな腫瘍なし.MRCPで胆・膵病変なし.
【経過】第2期梅毒で病態を一元的に説明可能と考えた.髄液検査で明らかな異常を認めなかった.X+1日からX+14日までセフトリアキソンを投与したところ,血清RPRはX+8日に76倍,X+36日に13.5倍と改善し,並行して肝胆道系酵素も改善,尿蛋白も陰性化した.血清CA19-9も,X+8日に73 U/mL,X+36日に28 U/mLと改善した.
【考察】血清CA19-9上昇と良性疾患との関連は肝胆道系疾患や肺疾患などで報告されている.機序は不明だが,(1)胆管上皮細胞または(2)気管上皮細胞からのCA19-9逸脱,(3)CA19-9抗原類似エピトームの検出などが考えられている.本症例での肝障害は梅毒による変化と考えられ,それらの改善に伴いCA19-9も低下したため,機序(1)または(3)が尤もらしい.
【結語】梅毒の活動性や肝胆道系酵素と血清CA19-9値とが連動する症例を経験した.梅毒またはそれに伴う肝障害がCA19-9上昇に寄与したと考えた.

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