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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-079] 播種性血管内凝固に至っていた日本紅斑熱の一例


【症例】83歳女性【主訴】発熱,皮疹【病歴】X年8月29日39℃の発熱あり,31日より皮疹が出現した.9月2日近医皮膚科より精査目的に当院皮膚科に紹介となった.血液検査にて肝障害や腎障害,著明な凝固異常あり,原因精査と全身管理目的に当科コンサルトとなった.随伴症状は認めなかった.食事や飲水はできていなかった.登山や農作業などはしていないが,自宅近くに草むらはあった.【身体所見】BT:39.7℃,PR:86/min,BP:76/49mmHg,RR:24/min,SPO2:96%(RA),意識清明.心音・呼吸音異常なし.体幹・四肢・手掌に多発する掻痒感を伴わない紅斑あり,左足底に痂皮あり.【検査所見】WBC 7710/μL(Neu 92.0%,Lym 6.1%),Hb 13.7 g/dL,PLT 8万/μL,Alb 3.0 g/dL,T-bil 0.6 mg/dL,AST 76 U/L,ALT 37 U/L,LDH 423 U/L,ALP 53 U/L,γ-GTP 84 U/L,CK 126 U/L,BUN 31.7 mg/dL,Cr 1.99 mg/dL,CRP 37.95 mg/dL,PT-INR 1.16,FDP 66.1 μg/mL,FENa:0.11.血液培養:陰性,血液Rickettsia japonica PCR:陽性【経過】初診時に手掌を含めた全身の紅斑を伴う高熱,炎症所見の上昇,肝機能障害,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation;DIC)の所見を認め,皮疹の性状と刺し口から日本紅斑熱をはじめとしたリケッチア感染症と考え,痂皮や血液検体を保健所へ提出し,MINO200mg/day+LVFX500mg/day内服開始した.DICに対しては明らかな出血傾向や血栓塞栓症状もなく,原疾患治療のみで対応した.治療開始後徐々に解熱し,day5以降は発熱無く経過した.肝障害やDIC,炎症所見も速やかに改善し,14日間治療継続し,day15自宅退院とした.【考察】日本紅斑熱は近年発生報告数が増加傾向にあり,以前発生地域は関東以西に多いとされていたが,北上を続けている.症状は発熱(99%),発疹(94%),刺し口(66%)が三主徴とされており,上記症状を認める場合は,本疾患を想起し,重症化を防ぐため早期に経験的治療を開始する必要がある.死亡例の症状を生存例と比較すると,肝機能障害やDICを認める症例が多く,本例は早期治療介入によりさらなる重症化を抑制できたと考える.

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