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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-082] 鼓膜に中耳炎所見を認めない難聴の患者に対してANCA関連血管炎性中耳炎と診断し,聴力の改善を得た一例


【背景】ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)は,ANCA関連血管炎に難治性中耳炎,または進行性感音性難聴が伴う疾患である.ANCA陽性以外に特徴的な所見を欠くため診断に苦慮する場合もあり,聴力の回復には早期診断,治療が不可欠である.【症例】86歳,女性.【主訴】発熱,両側難聴.【病歴】X-1年7月に近医で滲出性中耳炎と診断され,鼓膜穿刺により症状は一時改善した.X年2月末から38℃台の発熱,同年3月初旬から両側難聴の増悪を自覚した.3月末日に夜間咳嗽が出現し前医を受診した.血液検査で抗核抗体640 倍,RF陽性であり,膠原病などが疑われ,4月に精査加療目的に当科紹介後,入院となった.【所見】両側鼓膜に中耳炎を疑う所見を認めなかった.血液検査ではWBC 9550 /μl,CRP 12.28 mg/dl,MPO-ANCA 380 IU/mlであった.標準純音聴力検査では,右は68.8 dBの感音難聴,左は81.3 dBの混合性難聴であった.頭部単純CT検査では,両側乳突蜂巣の発達不良,両側鼓室内に軟部影の充満を認めた.【経過】再発性中耳炎と進行性聴力障害,MPO-ANCA陽性を認め,OMAAVと診断した.第5病日からプレドニゾロン 40 mg/日を開始し,第18病日より1週間おきに5 mgずつ漸減した.また,リツキシマブ投与の1回目を第18病日に,2回目を第32病日に施行した.第15病日にはCRPが陰性化し,第38病日にはMPO-ANCAが68 IU/mlまで低下した.第31病日の頭部単純CT検査では両側乳突蜂巣内の含気が回復し,両側鼓室内の軟部陰影は消退していた.また,第40病日の標準純音聴力検査では,右は56.3 dBの感音難聴,左は65.0 dBの感音難聴と,聴力の改善を認めた.【考察】難聴を伴う炎症性疾患では聴力障害を最小限に抑えるため本症を鑑別に挙げ,早期診断,治療が重要である.本症例のように通常の治療を施しても再発する中耳炎や,鼓膜所見は正常であるが難聴を伴う消耗性疾患では,本症を疑う必要がある.【結語】鼓膜に中耳炎所見を認めない難聴の患者に対してOMAAVと診断し,ステロイド/リツキシマブ併用療法を施行することで,聴力の改善を得た一例を経験した.

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