[P-110] がん関連病態で予後予測が変化し終末期患者のケア移行でコミュニケーションに難渋した1例
【背景】がん診療をあまり経験しないジェネラリストにとって, がん関連病態によって予後予測のずれを経験することがある
【症例】83歳 女性
【主訴】びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)末期に対する緩和目的
【病歴】X-6年までDLBCLの治療を行い以降は血液内科ならびに治療途中で発症したアドリアマイシン心筋症に対し循環器内科が経過観察をしていた. X-1年10月にDLBCLの再発を認めたが治療介入は困難と判断された. X年3月に全身状態悪化を認め感染性腸炎で血液内科に入院加療となった. 予後数日と病状説明され4月1日に同院緩和ケア科に転科となった.その後, 全身状態の改善傾向が見られたものの予後数ヶ月と見込まれ, 療養目的に4月25日に転院の運びとなった.【所見】入院時 BP79/43mmHg, HR82/min, 車中SpO2:70%に低下しO2:0.5→1.5Lに増量
【経過】入院翌日にBP70/57mmHg, HR140/min, 末梢冷感を認め, 頚静脈の怒張も認めた. エコー検査の結果, 新たな弁膜症の発生はなく, びまん性左室壁運動低下(EF 32%), IVCの拡大と頚静脈怒張が確認された. 心原性ショックが考えられ, 原因としてはアドリアマイシン心筋症による慢性心不全の増悪と診断した.輸液, ドブタミンを開始するも改善せず, 治療反応性に乏しく5月1日に死亡退院した.【考察】がん診療の専門分化を背景に, ジェネラリストはがん治療に関連した知識や経験を習得しにくい可能性がある. ジェネラリストの予後予測と異なる経過を示す病態として, アドリアマイシン心筋症を経験した. 各専門医と協働する上でアドリアマイシン心筋症をはじめ, がん治療に関連した病態について, ジェネラリストも理解する必要がある. また, 本症例ではケア移行に関連し家族とのコミュニケーションに苦慮した. 不確実性の高い終末期患者のケア移行について, 望ましいコミュニケーションについて議論していく必要がある.【結語】がん診療にジェネラリストが関わることは今後もっと増えてくるであろう. 関連病態を想起した予後予測に努め, ケア移行に関連したコミュニケーションの困難さを関係者間で理解する必要がある.