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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-085] 動脈周囲炎を指摘されたIgG4関連疾患(偽診群)にPSA正常の前立腺癌を合併した1例


【背景】IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、臓器の特徴的な腫大・腫瘤・結節・肥厚性病変、血清IgG4高値、組織学的所見から診断される疾患群である。IgG4高値を呈した動脈周囲炎の症例について、PSA正常の前立腺癌の診断に至った1例を報告する。【症例】71歳男性
【主訴】なし
【既往歴】大腸癌、胃癌【現病歴】X-3年9月に肺炎像を認め、呼吸器内科で器質化肺炎疑いと診断された。肺の浸潤影は自然に消退し、IgG4高値を認めたが、他にIgG4-RDに特徴的な病変はなく経過観察となった。X年Y-1月の大腸癌術後評価のCTで、左外腸骨動脈周囲の軟部影を指摘された。IgG4-RDが疑われ、同年Y月に当科紹介となった。【身体所見】涙腺や顎下腺の腫大なし、口腔乾燥なし、表在リンパ節腫脹なし、特に陽性所見なし【検査結果】WBC 5230/μl、CRP 0.13mg/dl、IgG 1853mg/dl、IgG4 932mg/dl、IgE 548IU/ml、CEA 2.5ng/ml、CA19-9 17.1U/ml、PSA 1.92ng/ml【経過】IgG4高値と動脈周囲炎からIgG4-RDと考えられたが、悪性腫瘍再発の可能性も疑われた。PET-CTで左外腸骨動脈周囲の他に前立腺と気管分岐部リンパ節に集積を認めた。Y+1月、前立腺生検で前立腺癌の診断となった。気管分岐部リンパ節生検で悪性細胞やIgG4陽性細胞は指摘されなかった。Y+2月に左側腹部痛が出現し、腹部CTで左外腸骨動脈周囲の軟部影増大による左水腎症を認めた。ステロイド治療も考慮したが、腫瘍随伴症候群の病変と考えて前立腺癌への治療反応をみる方針とした。Y+6月のCTで前立腺の縮小に加え、左外腸骨動脈周囲の軟部影縮小と左水腎症消失も確認され、この経過でIgG4の低下はなかった。【考察】動脈周囲炎以外のIgG4-RDに典型的な病変に乏しく、PET-CTからPSA正常の前立腺癌の診断に導くことができた。ステロイド投与は動脈周囲炎の背景疾患を不明瞭にさせるため、前立腺癌の治療のみで経過観察し、動脈周囲炎の改善を認め、不要なステロイド投与を回避できた。

【結語】IgG4高値の症例で指摘された病変が、IgG4-RDによるものか十分に吟味して治療方針を決定する必要がある。

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