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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-086] 著明な貧血を示したが,肺炎に伴い白血球・血小板数が正常だった再生不良性貧血


【背景】再生不良性貧血は汎血球減少で知られ,通常は赤血球,好中球,血小板のうち,少なくとも2種類の血球減少を伴う.
【症例】67歳男性
【主訴】体動困難
【病歴】もともとのADLは自立していたが,X日に入浴後の体動困難で救急要請し,当院に搬送された.著明な貧血,右肺炎を認め,精査・加療目的で入院した.
【所見】意識清明,体温 36.4℃,血圧 113/55 mmHg,脈拍 105 /分・整,SpO2 93%(室内気),呼吸数 15/分.眼瞼結膜は蒼白,右肺にcoarse cracklesあり,直聴診で黒色便・血便なし.白血球数 6,100 /μL(好中球数 4,730 /μL),赤血球数 93万 /μL,Hb 2.8 g/dL,Hct 8.8%,MCV 94.6 fL,MCH 30.1 pg,血小板数 19.6万/μL,LDH 181 U/L,BUN 20.5 mg/dL,Cre 0.99 mg/dL,CRP 2.01 mg/dL,Fe 213 μg/dL,UIBC 22.2 μg/dL,フェリチン 373 ng/mL,ハプトグロビン2-2型 379 mg/dL,ビタミンB12 197 pg/mL,葉酸 13.7 ng/mL,血清銅 158 μg/dL,エリスロポエチン 1,740 mIU/mL.胸部CTで右肺下葉に浸潤影あり.
【経過】高度貧血に対して赤血球濃厚液を,肺炎に対してセフトリアキソンを投与した.X+7日にはHb 8.4g/dL,SpO2 99%程度まで改善したが,同日の血液検査で白血球数 3,100/μL(好中球 1,360 /μL),血小板数 11.3万/μLと汎血球減少が顕在化した.骨髄生検ではhypocellular bone marrowであり,再生不良性貧血と診断した.
【考察】入院時はヘモグロビンの減少が目立っていたが,肺炎の治療経過に伴って白血球・血小板が減少し,汎血球減少が顕在化した再生不良性貧血を経験した.汎血球減少がマスクされた理由として,(1)肺炎で白血球・血小板の反応性に増加していた,(2)感染に伴う炎症または溶血でヘモグロビンが相対的に減少していたなどの可能性を考えた.本邦での再生不良性貧血の有病率は8.3(/人口10万対)と推定され,プライマリケアでは比較的まれだが,貧血の原因が不明の場合には鑑別診断に挙げる必要がある.
【結語】再生不良性貧血は,感染症による炎症などで汎血球減少がマスクされた場合,貧血のみが前面に出ることがある.

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