[P-087] 後頭部の癰から多発性筋膿瘍を併発したと思われる2型糖尿病の1例
【症例】44歳男性。【主訴】発熱、両大腿部痛。【現病歴】初診1か月前頃より左手掌に有痛性皮下結節、右前腕に腫脹・疼痛が生じた。その後両大腿部の疼痛が徐々に出現し歩行困難となり近医内科を受診、精査目的にX月Y日当院当科紹介受診した。【身体所見】体温 36.7 ℃、脈拍 123 /分。右前腕尺側に母子頭大の皮下結節、左前腕屈側にくるみ大の皮下結節、左手掌に大豆大の皮下結節があり、いずれも圧痛を認めた。両側大腿前面に軽度の熱感を伴う著しい腫脹あり強い自発痛・圧痛を認めた。【検査結果】血液検査ではWBC 18500 /μL(好中球 86%)、CRP 32.36 mg/dLと炎症反応上昇を認めたがプロカルシトニンは陰性であった。また、随時血糖 307 mg/dL、HbA1c(NGSP) 11.4 %と未治療糖尿病を認めた。造影CTでは両大腿直筋、左前腕屈筋群に多発筋膿瘍を認めた。【経過】第3病日に両大腿膿瘍に対して切開ドレナージ術を施行し、セフトリアキソンの点滴静注を開始した。血液培養、膿培養からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出された。経胸壁心臓超音波検査では感染性心内膜炎を疑う所見は認めなかった。再度全身を観察したところ、後頭部に排膿を伴う結節が集簇しており、癰と診断した。癰の膿培養からはMSSAが検出され、癰からMSSA菌血症に至ったものと推察した。抗生剤をセファゾリンに変更し、炎症反応や両前腕や両大腿の腫脹・疼痛、carbuncleは改善傾向となった。糖尿病に対して経口血糖降下薬を導入し第26病日に自宅退院した。【考察】血糖コントロール不良の未治療糖尿病では毛包炎が重症化し癰に至る例も多い。本症例では癰からMSSA菌血症に至り、四肢の多発筋膿瘍を発症したものと推察される。【結語】後頭部の癰から多発性筋膿瘍を併発したと思われる2型糖尿病の1例を経験した。