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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-089] 急性動脈閉塞を合併した有痛性青股腫の一例


【背景】有痛性青股腫は重症な急性深部静脈血栓症であり、稀な疾患である。半数は悪性腫瘍を有するとされており、静脈閉塞に加え動脈閉塞による下肢虚血を併発した場合は緊急性が高くなる。
【症例】60歳 男性
【主訴】左下肢痛
【病歴】以前から左下肢の間欠性跛行を認めていた。入院当日、左下腿の安静時痛と浮腫が出現し、徐々に大腿部まで拡大し色調変化も伴ったため救急要請となった。半年前から食思不振や体重減少があり、食事は十分摂取していなかった。
【所見】血圧158/90mmHg, 心拍数110回/分 整, 呼吸数 20回/分, SpO2 98%(室内気), 左大腿以遠の片側性浮腫あり, チアノーゼあり, 左足背動脈触知できず, 冷感あり, 感覚鈍麻なし
血液検査:CRP 3.6mg/dL, Na 137mmol/L, K 3.4mmol/L, BUN 8mg/dL, Cre 1.71mg/dL, CK 422U/L, 白血球 15000個/μL, Hb 18.7g/dL, Ht 54.7%, PLT 193個103/μL, Dダイマー156μg/mL
下肢静脈エコー:左外腸骨静脈まで閉塞、広範囲に血栓あり
造影CT:左浅大腿動脈から膝窩動脈まで閉塞、側副血行路あり、両側肺動脈内に血栓あり
【経過】間欠性跛行があり閉塞性動脈硬化症が背景にあると思われた。急性発症の下肢痛とチアノーゼから急性動脈閉塞と判断した。循環器内科・外科にコンサルトし、片側性浮腫を認めることが急性動脈閉塞とは合致せず、さらに造影CTで偶発的に肺塞栓症を認めたことで主病態は急性深部静脈血栓症すなわち有痛性青股腫であり、下肢腫脹が側副血行路を閉塞させ急性動脈閉塞を合併したと考えた。抗凝固療法を開始し再灌流が得られチアノーゼは改善したが第2病日にコンパートメント症候群を発症したため減張切開術が施行された。術後経過は良好であり、悪性腫瘍の検索など行っている。
【考察】有痛性青股腫は動脈閉塞を合併することもしばしばあるとされているが、本症例では初療の段階で急性発症やチアノーゼから主病態が急性動脈閉塞であると判断してしまった。主病態を判断する際には片側性浮腫の有無を評価することが必要である。頻度は少ないが緊急性を要する疾患を経験したため報告する。

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