[P-106] CRP陰性で多彩な全身症状を呈し無菌性髄膜炎を併発した急性HIV感染症の1例
【背景】急性HIV感染症は非特異的な急性感染症状を呈し、しばしば診断に難渋する。発熱、頭痛、咳嗽など多彩な全身の症状を認めたが炎症所見に乏しく、5度の医療機関受診を経て急性HIV感染症と診断した1例を経験したため報告する。【症例】24歳女性【主訴】不明熱【病歴】来院21日前に39℃の発熱があり近医Aを受診し、解熱薬を処方された。その後も40℃台の発熱が持続し、倦怠感、頭痛、咳嗽、咽頭痛を主訴に近医B、Cを受診するも原因不明で帰宅となっていた。症状が増悪し2度救急搬送されるも血液検査やCT検査では原因が分からず、精査目的に当科を紹介受診した。【所見】意識清明、体温 38.0℃、血圧 91/57 mmHg、脈拍 98/min、SpO2 99%(室内気)。項部硬直なし。口腔内アフタと右下智歯周囲の歯肉に口腔潰瘍を認める。両頸部に弾性軟・小豆大の圧痛を伴うリンパ節、両鼠径部に弾性軟・30mm大の圧痛を伴うリンパ節を触知。緑色の帯下を認める。両下腿に淡い紅斑が散見される。血液検査:WBC 6,800/μL、異型リンパ球 29%、AST 32 U/L、ALT 30 U/L、CRP 0.1mg/dL。CT検査:両頸部に小リンパ節が散見される。肝脾腫なし。【経過】スクリーニングとして施行したHIV定性検査(CLIA法)は陽性であった。HIV-1/2抗体確認検査(IC法)p31-、p24-、gp160+、gp41+でHIV-1陽性、HIV-RNA定量は3.3×106copies/mLと著増しており、急性HIV感染症と診断した。入院後も高熱と頭痛が持続したため腰椎穿刺を施行し、髄液細胞数 61/μL(多形核:単核=1:99)、髄液HIV-RNA定量3.3×106 copies/mLと増加を認め、HIV関連無菌性髄膜炎を合併していると考えた。症状は自然軽快し、第14病日で退院して外来で抗HIV療法を開始した。【考察・結語】HIV感染症の急性期は、非特異的な急性感染徴候を呈する。本例は多彩な全身症状を呈したにも関わらず、経過中CRPは陰性だった。炎症所見に乏しくても臨床情報を総合的に評価し、HIVを含むウイルス感染症も鑑別に挙げ検査を施行するべきである。